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日立ハイテク

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2021.10.08

Precisionについて

運用の壁と分析の壁

国産初の生化学自動分析装置の誕生から50周年。私たちの製品開発は、変動するグローバル環境の中で揺れ動いてきました。その間、様々な意見に大きく価値基準が変動し、激しい業界の浮き沈みも経験しました。
それでも日立は、過去50年間、体外診断検査の分野で一貫して先駆者で有り続けます。日本で初めて生化学自動分析装置400形を開発し、80年代以降は、ターンテーブルディスクリート方式の705形を開発し、グローバルトップに躍り出る。それ以降も大型分析装置のモジュール方式、高感度免疫測定装置のECL方式、免疫検査と生化学検査を融合したハイブリッド方式を開発して、臨床検査室の効率化、高いデータ品質・信頼性向上に貢献してきました。日立の設計者は、これら製品開発を進める上での重要な基本を、1.データ精度の確保、2.測定項目の拡充、それを実現するための3.測定技術の開発、4.データの標準化と捉えてきました。
このChronicleコーナーでは、まず「臨床検査の基礎知識」で日立が開発した技術のおさらいから、次の「コア技術」では、具体的な技術・分析装置・測定項目を含めた臨床検査の自動化の変遷に沿い、日立ハイテクが一貫して進めてきた製品開発の考え方と技術との関係を紐解いていきます。

Precisionについて

体外診断装置を開発するうえで最も悩ましい課題は、再現性である。患者検体は、未知の検体であるため、測定結果が異常に高い、低い、基準範囲内なのか、事前に知ることは出来ない。緊急患者検体は一度の測定で、診断に使用される。そのため、高い精度で測定されることが必須である。理念として技術者が疑問を挟む余地は無い。しかし、80年代は、高い精度は何をすれば実現したと証明できるのか、装置で何を確認すれば良いのか手順や方法に基準は無く非常に悩ましかった。現在は、日本臨床化学会の分析試薬の処方標準化、酵素標準液のERM提供、不確かさISO17511に基づくトレーサビリティー、統計処理ソフトの提供、ISO 15189に基づく臨床検査室認定、JCCLSによる基準範囲の設定など、生化学検査では多くの確認手段が学会で認証、制度化され、開発した製品の評価もやりやすくなった。
装置開発で最も大切なことは、広義の再現性の確保である。自動分析装置は、人間がマニュアルで実施してきた検査手順を自動化したものである。機会がその手順を正確に再現するのか、各機構動作のブレを少なくすることが最も重要であり、許容できないブレが発生した時に異常を的確に警告するシステムを構築することが最重要である。動作したから良いわけでは無い。
それでも再現性に関する悩みは尽きない。装置開発の過程で、何十回、百回、千回と試験回数を増やしていくと、データポカが発生する。大きかったり、小さかったりする。装置開発初期は、試作機を使用した何十回程度の試験で、装置に何かの間違いがあるのは常のため、機構の見直し、ソフト制御の変更で対処していく。結構、楽しいものである。しかし、技術・装置開発も終盤に差し掛かり、何千回の試験となってデータポカが発生することがある。間違いないと思って試験に臨んでいると、がっかりすると同時に、偶然じゃないかと思ってくる。1個のデータポカを除けば素晴らしいデータだと、なおさら、問題無いのではと思えてくる。これは悪魔のささやきみたいなもので、ここでは時間はかかっても原因を明確にして丹念な対策が重要なのだ。現象を再現させることが出来れば、必ず、対策・答えは見つかる。そのためには、条件を明確に記録して、出来る限り再現できることが大事である。

運用の壁と分析の壁

50年ほど前まで、臨床検査室は光度計、液クロ、原子吸収光度計などの計測装置はあった、そこでは、検体の前処理、試料・試薬の一定量の分取、試験管での反応時間・温度の管理、計測した吸光度から濃度換算、報告書の作成などは、個別に操作者が実施していた。そのため、測定するためには、膨大な時間と手間が必要であり、1日に測定出来る患者検体数は限定されていた。
これらの課題を解決するために1950年代に、米国のテクニコン社が試料の分取から計測までの分析プロセスをチューブの中で自動化したオートアナライザーを上市した。日本では1970年に日立が、分析反応を試験管の中で実施する400形を上市した。日立はチューブでは無く、試験管を使用して人間が分析する動作に近い自動分析装置を実現した。人間の操作に近く、装置故障、データ異常が発生しても、操作者が原因医究明して対処することが容易となった。
これらの装置導入で1日当たりの検査数は大きく向上し、報告時間も短縮された。その後、1980年に上市された705形は、ターンテーブルディスクリート方式の採用で、高精度の酵素測定も容易となり、1検体当たりの測定項目も自由に選択できるなど画期的な装置なった。これらの技術革新の中で体外診断検査が簡単に出来るようになると、いくつかの課題も指摘されるようになった。

運用の壁 -社会的な課題-

1点目は、検査数の増大と反比例して、医療費増加の抑制対策として保険点数の削減、今では当たり前になっている診察を受けた当日に検査結果も一緒にそろっていること、すなわち、検査の効率化が社会的に求められてきた。
2点目は、1970年代には多数の会社が遠心方式、バルブカット方式など独自開発された測定方式で製品化がなされた。同じ試薬を使用しても測定データも方式により異なることが報告された。医師会の検査データサーベイでも検査室により検査データが異なることの指摘が相次ぎ、データの信頼性向上、標準化が強く求められるようになった。特にデータの標準化は、メーカ1社で解決できる課題ではなく、試薬、標準液の標準化、データ管理方法、検査室の精度管理方法など、学会とも連携して解決すべき課題であった。

分析の壁

装置の自動化を実現したことで、新たな課題も明確になってきた。分析装置の試薬プローブは多数の項目をランダムに測定することを実現したことで、複数の試薬の間でコンタミネーションが発生する場合があった。患者試料は服用薬物を含んでいて、代謝された成分が試薬と反応する場合や、患者試料の遠心分離、採血時に発生する溶血等の影響する要因がデータに影響する場合があった。
その他にも、80年代になると免疫分析で抗原抗体反応が試薬として導入されると、患者検体の抗原が非特異的に反応する場合など、分析装置の測定感度の向上、測定対象の拡大により多数の課題があることが明白となってきた。

運用の壁に対しては、検査件数に対応して分析モジュール数を選択できるモジュール方式、検体の自動希釈機能、検体の自動再検機能、免疫分析モジュールを組み合わせたハイブリッド方式の多数の製品を提供し、効率的な検査室運営に貢献した。
分析の壁には、検体の血清情報の測定から始まり、試薬キャリーオーバー回避機能、検体の詰まり検知機能、反応過程の異常をチェックする吸光度チェック、反応過程近似法となど、データに影響する異常を発見して信頼性の高い分析を実現した。
「運用の壁」と「分析の壁」は表裏一体となっている。社会が求める医療への要望が変化すれば、分析技術に対する要求事項も変化していく。今にとどまっているわけでは無い。「いずれを今に」のタイトルのように壁を克服して新たな価値を持つ製品・技術を開発していくことが大事である。

なお、個別の製品と技術の詳細はコア技術で順次紹介していく。

株式会社 日立ハイテク
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