LiB(リチウムイオン二次電池)の開発から再利用までの課題解決に貢献
加速するEVシフトを支えるソリューション開発
地球温暖化対策として自動車業界では、ガソリン車やディーゼル車からEV(電気自動車)へのシフトが加速しています。当社はEVに欠かせないLiB*1製造設備の提案や次世代電池(先進LiB*2,全固体電池*3等)メーカーに対して開発・製造支援を行っています。また、電池メーカーが、安全なLiBを生産するための検査ソリューションを提供しています。さらに、EV導入の意思決定やEVの最適オペレーション・メンテナンスの実現、LiBの寿命延長やリユース、リサイクルまで、LiBのライフサイクルをトータルでカバーするソリューション開発をめざしています。
*1 LiB(リチウムイオン二次電池):鉛やカドミウムなどの有害物質を使用せず、比較的環境に優しいとされています。また、リサイクル技術も進んでいるため、使用済み電池から資源を取り出すことが可能です
*2 先進LiB:現行LiBをベースに性能向上を図った次世代二次電池です
*3 全固体電池(全固体リチウムイオン二次電池):全固体電池は、液体電解質を固体に置き換えることで安全性が向上し、発火リスクが低減されます。また急速充電が可能なため、電気自動車などでの活用が期待されています
次世代電池の開発・製造を支援するプレエンジニアリング活動
EVで使われている現行LiBは、2030年までにモビリティ電池市場の6割以上を占めると予測されています。一方、より環境負荷が少なく、性能の高い次世代電池の開発も加速しており、実用と量産に向けて、世界中で研究開発が進んでいます。日立ハイテクは、新たに次世代電池製造に参入したメーカーにエンジニアを派遣し、試作ラインの開発から量産に向けた装置の開発まで、メーカーへの支援を拡大することで、試作やパイロット生産を実現しています。今後も先進的な電池開発を支援し、脱炭素社会の早期実現に向けて取り組みを加速させていきます。
瞬時に異物を見つけ出す検査ソリューションで、LiBの品質と安全を守る
LiBの安全性と品質に対する要求も高度化しています。LiBは製造工程で金属片などの異物が混入すると、たとえ微小な異物であっても電池寿命の低下など、品質面に影響を及ぼします。さらに異物が混入したLiBは発熱や発火の恐れがあり、車両火災につながるなど、人的被害も懸念されます。当社はLiBの製造現場に、異物を見つける検査ソリューションを提供しています。2023年度は、「抜き取り検査」に使用する「X線異物解析装置 EA8000A」に加えて、「全数検査」向けに新たな異物検査ソリューション「X線インライン異物検査システム」を導入し、検証を開始しました。
生産ライン上(インライン)に異物検査システムを導入することにより、製造工程で異物がどの程度発生しているかを可視化できるため、不良率改善に役立ちます。加えて、より上流工程で異物混入品を製造工程から外せるようになり、材料コストの低減に貢献しています。2024年度は、顧客との議論を重ね、異物混入品の廃棄コストの削減をめざした取り組みを進めるとともに、次世代電池向けの検査ソリューションの検討を開始します。
将来的には、製造の効率化や材料の廃棄率低減をさらに進めるためにAI(人工知能)を活用し、異物混入を事前に予測・防止するサービスの開発をめざしています。今後もLiBの生産現場を支えるイノベーションを通じて、地球環境及び、科学と産業の発展に寄与していきます。
LiBライフサイクルの課題をトータルに解決
幅広い産業において、商用EVやバス、建機、農機、船舶、鉄道等の電動化の拡大が期待されています。
一方で、EV導入には費用や業務効率、規制対応の面で、内燃機関を持つ車両と異なる検討や運用が必要です。そこで当社は、フリート事業者*4の課題を起点に、遠隔でLiBの劣化状況を診断する技術を開発しました。電池の健康度であるSOH(State of Health)を継続的に推定し、これをもとに運用やメンテナンスのタイミングを最適化することで、運用・保守を効率化するとともに、LiBの劣化を抑え、長寿命化を実現します。また、車載用LiBはEVでの利用の退役後、別の用途で利用が期待されています。中古LiBの二次利用・リサイクルにおいても、SOHの経時変化を車載時の運用履歴データとともに管理・可視化することで、適切な二次利用やリサイクルに繋げることができます。2023年度は大手商用EVレンタル企業とともに、LiBの劣化状態を高精度に遠隔で推定できること、および、SOHの遠隔診断を活用した電池寿命延伸等の価値提供が可能であることを確認しています。
電動化によるCO2削減は、排出権やカーボンクレジットの認証・取引など、環境価値の定量化や流通にもつながります。また、EVには他にも保険料やファイナンス、リセールバリューといった特有の課題が存在しますが、車両・電池の運用データの活用は、これらの解決にも繋がっていきます。今後はさまざまな企業と協創することで、中古LiBの二次利用促進や、ライフタイムバリューの最大化など、電池のライフサイクルにおける課題を解決するLiBライフサイクルマネジメントソリューションの構築により、さらなる経済価値及び環境価値の拡大をめざします。
*4 運送会社やバス、タクシー、レンタカー、リース会社など、人や物の移動を目的に、多くの車両をもとに運用する事業者
アンケート・お問い合わせ
今後のMATERIALITY BOOK作成に活かすため、是非アンケートにご協力をお願い致します。
お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ区分で「CSRに関するお問い合わせ」をご選択ください。