トヨタ自動車株式会社 様
高エネルギーX線CTスキャナ
近年、より良い製品造りを目指しデジタルエンジニアリングを活用した製品開発が進められています。その活動の中で実物を3次元で計測し、CADデータと同様にできているかの確認ニーズが高くなっていました。3次元形状計測はプローブを用いた接触式が幅広い対象物の計測に活用されています。
また、広い範囲を短時間で計測可能な光投影等を応用した非接触の3次元計測器が数多く開発されてきましたが、両手法ともプローブや光が到達しない複雑な部位や、内部の形状は計測できないため、鋳造部品では製品を切断して対応するなどの課題がありました。
X線CTを用いた3次元形状計測への応用が進んできており、トヨタ自動車はこの技術に着目し自動車部品全般に適用可能な高エネルギーX線CTスキャナを用いた3次元形状計測システムを開発・運用しています。
高エネルギーX線CTシステムとは、高エネルギーX線CTスキャナ部と測定されたデータからCT画像を作成する画像再構成装置と、連続的に計測されたCT画像から3Dモデルを作成する、3Dモデル化システムで構成されています。
3Dモデルとは、外表面を三角形集合体で構成されたポリゴンモデルです。本システムのポイントは、1)自動車部品全般に適応できること。2)高精度に計測できること。3)CT画像が短時間に作成できること。4)3Dモデルを自動に作成できることです。
高エネルギーX線CTシステム
本システムは、自動車開発から生産にいたるまで広く活用しており、高品質な製品造りへの展開として、今回は鋳造分野での活用事例をご紹介を致します。
近年、地球環境問題を背景に、自動車の低燃費を目的にエンジンの軽量化が進行しています。エンジンブロックではアルミダイカスト化が主流となっています。ダイカスト鋳造法は、コスト・生産性・鋳造肌面が優れるという特徴がある反面、高速で射出した溶湯を急速に凝固させるために、ガス欠陥、引け巣等の鋳造欠陥が発生するといった課題があります。これらの鋳造欠陥を低減させるために、湯道や押湯などの配置設計および、鋳造条件の最適化に日夜取り組んでいます。
自動車全般に対して、高速・高精度に3D計測可能な、世界トップ性能の高エネルギーX線CTスキャナとCT画像の高分解能化に対応した高速な3Dモデル化システムを運用してます。この技術により、製品を切断せずに内部形状を三次元で計測することが可能となり、高品質な製品開発へ活用しています。
X線CTは従来の断面検査から三次元形状計測装置へ活用範囲を広げてます。複数の材料で構成された部品や、車両外板等の薄板部品など一部の対象に関しては、手作業によるモデル化を自動処理を含め、3Dモデル化精度向上を進めていきます。更には、電動化・知能化いずれについても、競争力強化に向け、高エネルギーX線CTシステムの活躍の場は大きいと思います。
100年に一度の大変革の時代。トヨタは「モビリティカンパニー」にモデルチェンジしていきます。
「未来のモビリティ社会」の実現を目指しながら、これまで以上に「愛車」にこだわり続け、「もっといいクルマ」をお届けしていきます。
引用元:「可視化情報 Vol.24 Suppl.No.2」 (2004年9月)
高エネルギーX線CTを活用した3次元形状計測