スズキ株式会社 様
環境対応として燃費・電費向上のニーズが年々高まっています。
対応方法の一つとして、鋳造部品の薄肉化による軽量化がありますが、薄肉化の背反として、鋳造不具合が発生しやすくなります。
製品開発では試作段階において不具合を発見することが重要です。
例えばエンジンのシリンダーブロックやシリンダーヘッドなどの鋳造不具合はその場所が想定できれば、切断して確認することはできます。しかし部品全体をくまなく調査するには、切断では時間が掛かる上、切断の仕方によっては見逃してしまう恐れもあります。
エンジン開発の中でこのような不具合を見逃したままエンジンを組み立てて運転評価し、それが原因でエンジンが壊れてしまうと、評価をやり直さなくてはなりません。評価(試験)は長いものは数週間もかかってしまいます。これを防ぐために、シリンダーブロックのような大型の鋳造部品でも非破壊で検査できる、高い透過能力を持つ高エネルギーX線CT装置が有効であり、必要でした。
高エネルギーのX線CT装置を導入するとなれば大きなコストもかかりますが、時代の変化が早く自動車技術が日々進歩していく中、お客様に求められる商品をタイムリーに提供するために開発のスピードを上げていく必要がありました。計画通りの開発期間で高い性能を満足しつつ、安全・安心の製品をお客様に届けるために、高エネルギーX線CT装置を導入しました。
(左)四輪パワートレイン企画・解析部 平口 様
(右)四輪パワートレイン企画・解析部 久保田 様
当時、高い透過能力のある1MV以上の高エネルギーX線CT装置は国内メーカーでは日立1社だけでした。点検や保守対応などメンテナンスも重要になるため、利便性の高い国産の日立を選びました。
導入は2009年でした。周りからは「なんか見慣れないデカイものが来たな」という目で見られました。とりあえず何でも見てみようと撮像しました。使ってみたら、「想像以上に役立った」と好評を得ることが多く、社内からの依頼を数多くいただきました。部署間の連携にもつながり、用途も増え、今ではなくてはならない設備になりました。
導入の効果は望んだとおりでした。鋳造部品の内部観察の対策には、従来は原因がわかるまで何度も切断するしかなかったのですが、導入後は切断が不要な上、データをフィードバックして最適解を見つけるという開発の設計サイクルを短縮化することができました。
具体的には、X線CT装置を利用した検査によって試作品の良品の判定が出来るようになり、効率はもちろん検査の質も向上しました。また、X線CT装置で全数検査して確実に図面品質を満足する試作品を用いて運転評価することにより、効率的に開発テストを行なえるようになりました。特に高エネルギーのX線CT装置を導入したおかげで、検査要望の多いエンジン大型部品を始め、同様に大型であるトランスミッション、モーターなどの検査需要にも対応できています。また吸気ポートや冷却水通路など外からは見えない内部の形状については、従来は出来なかった、実際の鋳造品の形状をCTデータで見える化(3Dモデル化)することで、設計3Dデータとの違い(型ずれや段差等の形状違い)を詳細に把握することが出来るようになりました。
さらに、このCTデータをCAEにフィードバックしてエンジン性能への影響度合いを見たり、想定していた性能が出ていない場合は、その原因究明や改善を従来より早く確実にするなど、設計開発のレベルアップとスピードアップに貢献しました。私たちは四輪のパワートレイン部門としてX線CT装置を導入しましたが、社内で評判が広がり、二輪など他事業のエンジン関連部門や、他の拠点からも検査のオーダーがあるなど全社的に広がり、活用できています。おかげさまで高い稼働率となっています。
さらなる電動化シフトに対応するため、モーター、eアクスル、電池モジュ-ルなどの開発、量産に対しても貢献できると期待をしています。高エネルギーX線CT装置を開発に活用できることは大きなアドバンテージであり、私たちはこれまでの経験を土台に、新たな商品開発においてもノウハウを活用し、高エネルギーX線CT装置の価値を理解して使いこなしていきたいと思っています。
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