この度、弊社グループ会社であるVLC Photonicsより「フォトニック集積回路の導入による光学システムの変革」というテーマで、ホワイトペーパーを執筆することとなりました。
つきましては、同ホワイトペーパーの内容について今後3週間にわたりお届けいたします。
フォトニック集積回路の市場、技術概要、今後の展望等をお伝えして参りますので、本稿を通じて少しでもご興味を持っていただけますと幸いです。
VLC Photonics Whitepaper v2.2 June, 2021
フォトニック集積回路の導入による光学システムの変革
Summary
フォトニック技術は、光通信、バイオメディカル診断装置、あるいは精密なファイバーセンサーなど、光を利用した様々なアプリケーションを実現しています。
その一方で、これらの用途に必要な光学部品はスペースを使い、高価になる傾向にあります。
特に、電子部品と組み合わせて使用する際には、精密な組み立てが必要になります。
これらの課題を解決するため、フォトニック集積回路という技術が注目されています。
シリコンフォトニクスという名前でも親しまれている同技術ですが、様々なフォトニック機能を集積回路に組み込み、システムを簡素化し、コストを削減することが期待できます。
従来、フォトニック集積回路を可能にする最先端の光製造技術は、ごく限られた人しか手に入れることができませんでした。
しかし現在、一般的なフォトニック集積技術は、様々なアプリケーションや市場において、本来の高度な機能を維持しつつ小型化を実現する、非常に興味深い技術として実証が進んでいます。
本稿では、フォトニック集積回路を使用するメリットを紹介するとともに、フォトニック集積回路におけるファブレス製造モデルの概要と、そのメリットについて説明させて頂きます。
今回は導入として、フォトニック集積回路の開発背景、適用が期待される市場についてご紹介させて頂きます。
Foreground
本稿でご紹介すること
本稿ではフォトニック集積の概念を紹介し、どのようにお客様の光学システムを改善できるかをご紹介させて頂きます。
具体的にはフォトニック集積回路の導入による利点として、以下の点が挙げられます。
- 小型化・軽量化
- 安定性と頑強性の向上
- 機能の増加・性能の向上
- 組立、パッケージング、テスト、運用コストの削減
フォトニック集積回路のレイアウト(左)と、実際に製造されたフォトニック集積回路(右)
Background
ASPICとその利点について
ASPIC(Application Specific Photonic Integrated Circuit )とは特定のアプリケーション向けに開発されるフォトニック集積回路のことを指し、エレクトロニクスと組み合わせることで、光信号の生成、操作、検出などの実現が可能です。
またASPICは、レーザーや受光素子などの能動的な機能と、スプリッター、カプラー、干渉計、フィルター、偏光処理素子などの受動的な機能を集積することができます。
従来、複数の微小光学部品を組み合わせていたものを、1つの小型チップに置き換えることができるため、ASPICは将来の光学システムやフォトニック技術によって実現可能な製品開発の新たな推進力となることを期待されています※1~5。
このようなフォトニック機能の集積は、以下のような利点をもたらすことができます。
- パッケージングやテストに掛かるコストの削減。特に大量生産(数千から数百万)の場合のコスト削減。
- フォトニック機能を集積することで、設計の複雑さを軽減し、量産性と歩留まりを向上。
- 頑強性の向上とモジュール組立の簡素化による、小型化(寸法、体積)、および軽量化。
フォトニック集積の適用が期待される市場
ASPICの設計・製造といった分野は、フォトニック集積回路市場の一部として認知されています。
フォトニック集積回路の世界市場は、2019年には50億米ドルを超えており、2025年には市場価値200億米ドル、かつ2020年から2025年のCAGRは28.30%になると予測されており、強い成長が期待されております。
フォトニック集積回路の適用分野としては光通信、バイオフォトニクス、センサー、量子分野などが挙げられます。
- 光通信分野においては、動画配信、SNSなどによりIPトラフィックが増加を続けており、データセンター事業者や、通信システムベンダーからは、その成長を維持するために積極的な価格低減が求められています※7。
そのフォトニック機能の一部、または大部分を単一のASPICに集積することで、光トランシーバやサブアセンブリ製品の多くは、市場の要求に対応していくことが可能であると考えられており、その意味で非常に注目されている技術と言えます。 - バイオフォトニクスの分野では、ウイルス検知センサー、局所診断用センサー、DNAシーケンサーといった用途で、一部実用化、もしくは実用化に向けた研究が進められております※8・9。
- センサー分野においては、干渉計の機能を集積したファイバーセンサー、自動運転向けなどで注目されているLiDAR(Solid-State-LiDAR)といったアプリケーションで適用が進められています。
- また近年注目されている量子分野においては、量子コンピュータを実現するための手法の一つとして研究が進められている他、量子通信を実現するためのQKD(量子鍵配送)、QRNG(量子乱数発生機)向けで、すでに実用化が進められております。
REFERENCES
- ※1
- M. Lebby, “Photonic Integration: What is the Holy Grail?,” in Compound Semiconductor, pp. 25-32, October, 2009.
- ※2
- A. Welrich, “PIC-based transceivers enable cost-effective 1G to 10G PON migration,” in Lightwave Online, March, 2010.
- ※3
- Chris Cole, Bernd Huebne, John E. Johnson, "Photonic Integration for High-Volume, Low-Cost Applications," IEEE Communications Magazine, March 2009.
- ※4
- Yasuhiko Arakawa, Takahiro Nakamura, Yutaka Urino and Tomoyuki Fujita, "Silicon Photonics for Next Generation System Integration Platform," IEEE Communications Magazine, March 2013.
- ※5
- The National Photonics Initiative, "Lighting the Path to a Competitive, Secure Future," Whitepaper, May 23, 2013.
- ※6
- https://www.reportlinker.com/p05999324/Photonic-Integrated-Circuit-Market-Growth-Trends-Forecasts.html?utm_source=GNW.
- ※7
- Cisco Systems, “Cisco Visual Networking Index: Forecast and Methodology, 2012-201 7 ,” May, 2013.
- ※8
- Yole Développement & Tematys, "Biophotonics Market, Focus on Life Sciences & Health Applications," report April 2013.
- ※9
- BCC Research, "Global Biochip Markets: Microarrays and Lab-on-a-Chip," October 2013.
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- VLC Photonics S.L.に書面で事前に通知し、同社から承認を得ること。
次回はフォトニック集積回路に集積可能な技術、基盤材料ごとの特徴について説明させて頂きます。
VLC Photonics、およびフォトニック集積回路について、より詳しくご覧になりたい方はこちらから。
何卒よろしくお願い申し上げます。