新型マルチコントローラの開発

DCSは、さまざまな設備機器とのネットワーク結合などにより多くの情報を取り扱い、より高度なプラント運転の実現へと進化することが求められます。その中にある計装システムのマルチコントローラは監視・制御の基幹部であり、高度運転を支える高性能化と、稼働率向上に大きく寄与する高信頼化が求められます。
新たに開発したEXシリーズの新型マルチコントローラでは、以下の信頼性機能の拡充をおこないました。

一過性演算異常検出の強化
二重化の1つの系内で制御演算を2つのCPUコアで実施した結果を照合します。

異常時の制御継続性の向上
実行系と待機系で演算を並行して実施します。

可用性の向上
システムバスの二重化をおこないます。

メモリのソフトエラー耐性の向上
主メモリだけでなくプロセッサのキャッシュメモリにもECCを付加します。

基板内の各電源電圧監視、温度監視を強化

そのほか、制御プログラムやプロセス入出力基板の流用による既設更新の容易化、CPU・通信性能、メモリ容量など今後の機能拡張や保守性の向上を考慮した構成となっています。

マルチディスプレイ機能による操作性の向上

プラントの省人化にともない、1人のオペレータが中央制御室のコンソールでおこなう作業は多く、複雑化しています。従来のシンクライアントシステムでは、1シンクライアント当たり1ディスプレイの表示・操作となり、ディスプレイ台数分のシンクライアントが必要でした。「EX-N01A」では以下の操作性の向上を実現しています。

マルチディスプレイ機能を追加

1シンクライアントに最大4ディスプレイを接続し、表示・操作することができ、同時に多数の情報を得ることができます。さらに、ディスプレイ間の操作・監視画面の表示や移動が容易になりました。1台のコンソールでの作業スペースが広がることで、操作性向上による作業効率化やストレス軽減の効果が期待できます。

図１　マルチディスプレイ画面の構成例

視認性の向上

システム画面の色彩やアイコンデザインを刷新し、長時間の監視・操作においてもプロセスの状況を的確に把握しやすいダークグレーをベースとしたフレームを加えました。従来のホワイトベースのフレームと2種類から選択が可能です。

図２　オペレーション画面例

監視制御ソフトウェアのユニット化・テンプレート化

計装現場では、ベテランエンジニアの減少や働き方改革により、プラントを熟知した専任者の人員確保が困難な状況にあり、DCS構築・保守改造における効率・品質向上への要求が高まっています。
そこで「EX-N01A」では、制御ソフトウェア構築ノウハウの共有化・再利用を可能にしたソフト構造を新たに開発し、より効率的・高品質なエンジニアリング業務の実現をサポートします。
また、制御ソフトウェアを標準化・再利用することで、制御構築におけるノウハウの継承が容易となり、エンジアリングツール(PCシミュレータ)を活用すれば、実機のない環境でもMLC機能をシミュレーションすることができます。

図３　ユニット化・テンプレート化

ユニット化

プラントを管理する上での単位となる設備ごとに制御ソフトウェアをグルーピングします。

図４　ユニット登録画面

テンプレート化

ユニット化した制御ソフトウェアを再利用することが可能です。実際の設備構成において一部変更が必要な場合でも、テンプレートから展開後、対象ユニットに対する部分的な制御ソフトウェアの変更ができます。ベースとしたテンプレートと比較し、変更部位の差分のみを抽出することが可能なため、制御ソフトウェアのテスト対象を限定できます。
制御ソフトウェアを設備や装置といったグループ単位で構築することができるため、類似の設備や装置が複数ある場合や大規模なプラントを設計・構築する際のソフトウェア構築量の低減、設備(ユニット)ごとのエンジニアの並列作業が図れます。

以上、総合計装システム「EX-N01A」のオペレーションと新技術についてご紹介しました。