というスローガンのもと、科学を通じて世の中のあらゆる事象を科学の視点で実験・観察し、真理を追求するサイエンスアーティスト・市岡元気先生の様々な活動が、今、科学好きの少年たちのみならず、多くの大人たちをも魅了しています。
また、市岡元気先生のYouTubeチャンネル「GENKI LABO」では2020年4月より日立ハイテクとのコラボレーションを開始、電子顕微鏡をはじめとする最新機器を駆使して、身近な疑問を次々に解明。その中には、再生回数が1,200万回を超える超人気動画も生まれました。提携した動画制作はすでに100本を超え、ついに登録者数100万人を突破しました。
今回は、私たちの最も身近にある「科学」の面白さを世の中に伝え続け、現在大活躍中の市岡元気先生に、科学の素晴らしさ、転機となった日立ハイテクとのコラボレーション、そしてこれからの夢についてお伺いしました。
元気先生:小さい頃から理科が大好きでした。最初は生物が好きで、住んでいた場所のすぐ裏が山だったので、小学校の頃は山に出かけてはカブトムシを捕まえたり、チョウを追いかけたりして、それを観察していました。小学校ではもちろん生き物係で、中学・高校でも生物は常に一番得意な科目でした。そのため、大学も生物やDNAの研究ができる学科に進みました。
元気先生:生き物を観察していると、「なぜ?」とか「どうして?」といった疑問が次々に湧いてきます。「どうしてこんな色をしているんだろう?」とかね。その疑問を解決するために色々調べていたのが、今の「GENKI LABO」の原点になっているのかもしれません。
元気先生:最初は小さい頃から好きだったアニメをテーマにしたものでした。アニメに登場する技をリアルに再現するにはどうしたらいいか、科学を使えば様々な魔法のようなことができる。例えば、ドラクエやポケモンを観ている人が、その流れで私の動画を見て、炎や水の性質を学べるような、そんな動画を作っていました。
元気先生:そうですね。でも実際には、科学は私たちにとって最も身近なものです。私たちの周りにあるほとんどの事柄が科学に関係しています。ただ、それに気づかないまま、科学を苦手だと思ってしまう人が多いんです。私が「GENKI LABO」で伝えたいのは、「科学を学ぼう!」ということではなく、「なぜ?」や「どうして?」という興味を追求していくと、その先に科学があるということなんです。まず好奇心があり、それに応えてくれるのが科学の楽しさなんだということを伝えていきたいと思っています。
元気先生:はい、その通りです。例えば、科学の視点で街を眺めると、全く違った見方ができるようになります。窓から外のビルを見て「ビルが建っているな」ではなく、「あのビルはコンクリートでできているから頑丈。でも、コンクリートってどうして硬いの?」と考えるだけで、科学の世界が広がります。そして、「知りたい」という気持ちだけでなく、「やりたい」と思っていることの先にも科学があります。パン屋さんになりたいと思えば、発酵に関する科学がありますし、農業をやりたいと思えば、美味しい果物を作るための科学があります。そんな志を持った方々は、科学を難しいとは思わず、自然に知識を身につけていくものです。
元気先生:はい。やりたいテーマはもう1万件くらい溜まっています。それに加えて、視聴者の方々から「これを知りたい」というリクエストもどんどん届いているので、テーマは尽きませんね。
元気先生:ありがとうございます。ただ、正直なところ、大きな変化を感じているわけではありません。再生数も、面白い動画を出せばたくさんの人に観ていただけるという感覚は変わりません。ただ、アンケートを取ると、もともと科学が好きではなかったけれど、この動画を見て好きになったという子どもたちが6割以上いると知り、それは本当に嬉しいですね。
元気先生:はい。日立ハイテクさんが夏休みに開催している社員のご家族向けのイベントで、いろいろな実験や日立ハイテクさんの製品を子どもたちに体験してもらっています。いつも子どもたちと接して感じるのは、その発想のすごさです。大人はすでに知識があるので、いつの間にか疑問に思わなくなっていることを、子どもたちはしっかり疑問としてぶつけてきます。例えば、レンズはなぜ物を大きく見せるのか。大人が当たり前として受け入れていることを、子どもたちにきちんと説明する難しさと面白さを改めて感じますし、大きなヒントにもなります。
元気先生:はい。100万人に達する中で、日立ハイテクさんの電子顕微鏡を最初に使った動画が大きなきっかけになったと思います。私は2019年に独立し、アニメやゲームの再現動画を中心に制作していましたが、翌年の2020年にコロナが流行しました。そのとき、身近な疑問として「マスクって何回洗えるんですか?」というテーマを取り上げたんです。どうしてマスクでウイルスを防げるのか、洗ったマスクを拡大して見るとどんな風に変化しているのか。それを日立ハイテクさんとのコラボで電子顕微鏡を使って調べたところ、当時だけで200万再生され、登録者も大幅に増えました。それ以前は科学の楽しい実験を扱った動画を作っていましたが、マスクの研究となると医療に近い内容になります。科学的な検証というか、責任も重く感じました。正直、やるべきかどうか迷いましたが、勇気を持ってチャレンジしてみたら、本当に多くの方に見ていただけるようになりました。
元気先生:元気先生:今、実現したい3つの夢があります。1つは、新しいラボを作ること。もっといろいろな実験を行うために必要な場所です。2つ目は、子どもたちのための実験スペースを作ること。きちんと指導者がいて、子どもたちが自由に実験できるスペースを作りたい。そして3つ目は、錬金術に挑戦することです。
元気先生:はい。中世から多くの人が錬金術に挑戦してきましたが、今まで成功した人はいません。しかし、現代の科学技術を使えば、錬金術は可能だと言われています。実際に、ある人が水銀を使った実験を行い、偶然にも少量の金を作り出したという話があるんです。センサーを使って金ができたことは確認できたものの、その金は目に見えるほどの大きさではなかったそうです。目に見えるサイズの金を作り出した人はいまだかつていません。おそらく、その理由は1グラム(現在の価格で約12,000円)の金を作るのに1,000万~2,000万円の費用がかかるからです。採算が取れないし、研究したところで何の価値があるのかということで、誰も挑戦していないのだと思います。しかし、私ならエンタメとして皆さんに見せることができ、それを通じて科学に興味を持ってもらえたら意味があると思っています。それをやろうと考えています。
元気先生:これからも科学に興味を持っていただき、日本からニュートンを超えるような実験ができたら面白いなと思います。