#01 マテリアルズ・インフォマティクスとは
近年注目の「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」
実験や論文を解析して素材の分子構造や製造方法を予測するなど、デジタル化の進展で膨大なデータをスーパーコンピューターなどの高性能な情報処理装置で操れるようになり、近年、素材分野での応用が広がりつつあります。
「マテリアルズ・インフォマティクス」の活用が加速した背景には、材料科学データベースの整備の進展と大規模化、AI関連技術の急速な発達やスーパーコンピューターの高性能化などがあります。AI関連技術の発達は、過去の実験や論文の解析を通じた素材の分子構造や製造方法の予測を可能としました。AIの中核をなすものが機械学習と呼ばれる統計数理に基づいた技術であり、その機械学習を含む情報処理技術をフルに活用し、材料開発を進めていきます。
「マテリアルズ・インフォマティクス」は、この機械学習に加え、物性理論、実験、シミュレーション、データベース、クラウド、セキュリティー・・・などさまざまな分野の技術により成り立っています。マテリアルズ・インフォマティクスは、材料科学と情報科学の融合分野とも呼ばれ、両分野の技術発展により、その活用が加速しました。スーパーコンピューターの高性能化や材料科学データベースの大規模化などが推進され、膨大なデータを高速で取り扱えるようになった環境がマテリアルズ・インフォマティクスの活用を後押ししたと言えるでしょう。
一方、マテリアルズ・インフォマティクスの取り組みへは各国の政府が積極的に投資する姿勢を見せており、米国オバマ政権時代にはマテリアルズ・インフォマティクスの推進に約2億ドルの予算が投じられました。この動きに続いて欧州、中国でも推進が広がり、日本でも2015年より、物質・材料研究機構(NIMS)を中心としてマテリアルズ・インフォマティクス推進の取り組みが始まりました。今後も注目度の高い分野です。
材料探索における従来型と「マテリアルズ・インフォマティクス」の比較
これまでの材料探索は、ひとりの研究者が知識と経験に基づいて化合物を選定・設計し、多くの合成をし、特性を評価するということが広く行われてきました。
物質特性をコンピューター上で高精度に計算された材料データベースやAIなどを活用するマテリアルズ・インフォマティクスによって、研究者の知識と直観をデータで支え、時間とコストを大幅に削減することが期待されています。