Introduction of TOC Analyzer TOC-2350
栗田 誠也*1
TOC(全有機炭素)は環境水、上水、精製水、超純水などの有機物を測定する方法として種々の公定法に採用されており、水質における汚れ具合の指標として用いられている。近年では、平成23年に日本薬局方が改正され、精製水および注射用水の純度試験方法として従来の過マンガン酸カリウム還元性物質からTOCに変更された。過マンガン酸法は分解が困難な有機物も存在するため、以前より有機物測定の正確性に問題があることが指摘されていた。一方、TOCはほぼすべての有機物を酸化分解して測定するため、高い正確性を有する測定法である。そのため今後も幅広い分野で採用されていくことが期待される。
本稿では、有機物の分解法として光触媒酸化チタン酸化法を応用した全有機炭素測定装置TOC-2350(図1)を紹介する。
図1 平沼全有機炭素測定装置 TOC-2350
TOCの測定原理を解説する。TOCは、試料に含まれる有機物を酸化分解し、発生した二酸化炭素の量を測定することによって有機物の量を求める方法である。有機物の骨格は炭素で形成されており、酸化分解時の二酸化炭素の発生量は有機物に含まれる炭素量に比例する。そのため発生する二酸化炭素を定量することにより、試料に含まれる有機物の総量を求めることができる。なお有機物を分解する方法として、「燃焼酸化法(乾式法)」、および「紫外線酸化法(湿式法)」の二通りに分類される。また、発生した二酸化炭素を定量する方法は、非分散赤外吸収方式(NDIR)や導電率法などがある。
本稿で紹介するTOC-2350は「紫外線酸化法」に分類されるが、"酸化チタン"を触媒として有機物を分解する特長を有したTOC装置である。図2に本装置の流路模式図を示す。
図2 TOC-2350流路模式図
本測定装置は主に、リアクタ、二酸化炭素を検出する検出器(NDIR)、キャリアガスを送気するためのエアーポンプ、試薬の充填および廃液用の送液ポンプ、サンプリングシリンジなどから構成される。
リアクタの模式図を図3に示す。リアクタはパイレックスガラス製で、二重管の構造をしている。中心には主波長380 nmの近紫外線ランプが配置され、その周囲に酸化チタン懸濁液がエアーポンプによって常時バブリングされている。サンプリングシリンジによって試料がリアクタに注入されると、試料中の有機物は、酸化チタンと近紫外線による光触媒効果で得られる高い酸化力によって二酸化炭素に酸化分解される。発生した二酸化炭素はNDIRに送気されて定量されるしくみとなっている。酸化曲線模式図および動作フローを図4に示す。
図3 リアクタ模式図
図4 酸化曲線模式図
以下に、TOC-2350の主な特長を示した。
本稿で紹介したTOC-2350は、主に上水や精製水のTOC測定装置として好適である。なお、TOC-2350はパソコン制御タイプであるが、他のラインナップとしてスタンドアロンタイプのTOC-2300や、オプションとして60検体のサンプルチェンジャなども取り揃えている(図5)。多くの特長を有したTOC-2350は、ご使用いただくお客様にご満足いただける製品であると確信する。
図5 TOC-2300(スタンドアロンタイプ)(左図)、ASC-2360形 サンプルチェンジャ(右図)
著者所属
*1栗田 誠也
平沼産業株式会社 設計部 研究室
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