ページの本文へ

日立ハイテク

F-7100形分光蛍光光度計の特長と新機能の紹介

Introduction of new features of the F-7100 fluorescence spectrophotometer

堀込 純*1

はじめに

F-7100形分光蛍光光度計の外観
図1 F-7100形分光蛍光光度計の外観

分光蛍光光度計は、試料に紫外線などの励起光を照射することで生じる蛍光を測定する装置である。試料の光吸収を測定する吸光光度法に比べて、高感度な分析装置である。蛍光物質だけが測定対象になるため、前処理によって目的成分だけを蛍光物質に変えることにより、選択性に優れた極微量の分析手段として用いられている。用途としては、医薬品の分析、各種ビタミン、添加物の食品分析、アミノ酸分析などの生化学臨床医学関係分野に利用される。また、染料、蛍光増白材、白色LED、ディスプレイ部材などの材料分析にも用いられるなど利用範囲は広く、重宝されている。
今回開発したF-7100形(図1)は、従来機*1のF-7000形をベースに基本性能の向上を図った。蛍光光度計で最も重要な仕様項目の感度(S/N)については、従来機*1と比較して、約1.5倍の高感度化を達成した。消耗品であるXeランプについては、長寿命ランプを採用することで従来機*1と比較して約5倍の長寿命化を達成した。ソフトウェアについても、日差変動の補正機能、話題の蛍光指紋測定をサポートする新機能を搭載し、使い勝手の向上を図った。

*1
F-7000 形分光蛍光光度計

F-7100形の特長

ここで、F-7100形の3つの特長を示す。

クラス最高レベルの高感度検出系

ロングセラーモデルF-7000形の信頼性の高い光学系を踏襲、高輝度Xeランプの採用と検出光学系の最適化によりさらなる高感度化を達成した。

水のラマン散乱によるS/N比較
図2 水のラマン散乱によるS/N比較

水のラマン散乱によるS/NをF-7000形と比較した(図2)。従来比1.5倍*1の高感度化に伴い、微弱な信号も低ノイズで検出できることが分かる。

*1
F-7000 形分光蛍光光度計

フルオレセインの極微量領域の測定例
図3 フルオレセインの極微量領域の測定例

図3にフルオレセインの高感度測定例を示す。F-7100形では、Blank(純水)と比較して1×10-13 mol/L(サブピコモル)オーダーの蛍光が検出されている。超微量領域においても、良い検量関係が得られている。

クラス最高レベルのロングライフ光源

ランプ寿命の比較
図4 ランプ寿命の比較*2

点灯時間と感度(S/N:PP)の関係
図5 点灯時間と感度(S/N:PP)の関係*4

新規Xeランプ*3の採用およびランプ点灯電源の改良により、光源の高輝度化かつ長寿命化の両立に成功した。ランプ交換周期が長くなることで、消耗品コストの低減、ランプ交換・調整作業の負担軽減が図られる(図4)。仕様に十分な尤度を確保した高品位設計のため、ランプの寿命時間付近まで高い感度を維持することが分かる(図5)。

FL Solutionsソフトウェアの機能向上

  1. 日差変動を補正する蛍光強度標準化機能
    この機能は、蛍光強度の経時的な変動、日差の変動を補正する機能である。蛍光強度は、ランプの輝度の変化、室温の変化、光学系の状態変化などの影響を受ける。標準試料の蛍光強度を測定し、サンプルの蛍光強度を標準試料の蛍光強度に換算することで、変動要因による強度が補正される。測定日が変わっても蛍光強度を直感的に比較することができるようになる。標準試料の換算値は、装置の日差変動の補正目的以外に、環境水中の腐植物質の測定(硫酸キニーネ換算)、水中のクロロフィルの測定(フルオレセン換算)、試薬純度の規定値(硫酸キニーネ換算)など異なる装置間の強度比較にも利用される。

    蛍光強度標準化機能による日差変動の推移
    図6 蛍光強度標準化機能による日差変動の推移*5

    *5
    データは参考値であり、使用環境によって異なることがある。
  2. 多変量解析を意識したレポート出力機能の強化

    3次元測定データ一括ファイル出力画面
    図7 3次元測定データ一括ファイル出力機能

    • 3次元測定データ一括ファイル出力
      話題の蛍光指紋分析は、多量の3次元蛍光スペクトルデータを多変量解析する。今回、搭載された3次元測定データ一括ファイル出力は、複数の3次元蛍光スペクトルデータをまとめて一つのExcelシートに出力することが可能である。行列を入れ替えた出力にも対応することで市販の多変量解析ソフトウェアへのデータエクスポートが容易になる。
    • 指定波長データテーブルの3次元測定結果対応
      着目する波長を指定波長データテーブルに登録しておくことで、必要な波長だけをMicrosoft Excel®に出力することが可能となった。
    • 多次光除去出力
      3次元蛍光スペクトルデータを多変量解析する際に不要となる2次光領域のデータをExcel出力しない設定「多次光除去」が追加された。励起光よりも短波長側のデータを出力しない「散乱光除去」と併用することで、解析に必要なデータのみを簡便にMicrosoft Excel®に出力することができる。

おわりに

F-7100形の特長と新機能を紹介した。蛍光分析は、LEDや太陽電池部材などの工業材料分野、食品検査分野、ライフサイエンス、バイオテクノロジー分野などの研究開発など、幅広い分野にて用いられる。今後もこれらの市場ニーズに適した付属品やソフトウェア、アプリケーションを開発・製品化していく予定である。



*2
F-7000形分光蛍光光度計の標準Xeランプ(P/N:650-1500)の使用限界時間(交換推奨時間)との比較
*3
専用Xeランプの使用限界時間(保証期間は、6カ月または500時間)
*4
水のラマン散乱による感度確認、1日使用時間6時間とし、点灯消灯を実施(合計420回)データは参考値であり、使用環境によって異なることがある。

著者紹介
堀込 純
株式会社日立ハイテクサイエンス 光学設計部

関連製品カテゴリ

関連する記事

さらに表示

ページ先頭へ