2. 測定事例紹介
2-1. 凹凸の大きな試料の高精度観察
図2-1のような急峻な斜面を測定する場合、DFMモードでは下り斜面で追従性が悪くなるため正確な形状が測定できません。一方、SISモードでは測定点でのみ探針を試料に接近させるため、急な斜面であっても測定点では常に探針と試料との距離は同じです。そのため、凹凸の大きい試料や複雑な形状をした試料であっても、簡単に正確な形状を測定することが可能です。
図2-2は凹凸の大きい試料をDFMモードとSIS-DFMモードで測定した結果です。DFMモードにより測定したラインプロファイルでは、下り斜面で追従できずに斜めになっています。SISモードでは急峻な下り斜面も正確に形状が計測できています。このようにSISモードでは急峻な斜面や凹凸の大きな試料でも正確な形状を簡単に観察することが可能です
図2-1 急峻な斜面での探針の動き(左: DFMモード、右:SIS-DFMモード)
図2-1 急峻な斜面での探針の動き(左: DFMモード、右:SIS-DFMモード)
2-2. 吸着力や粘着性の大きい試料や軟らかい試料の安定観察
図2-3は粘着材をDFMモードとSIS-DFMモードで測定した結果です。DFMモードでは全体的に横スジが多くぼやけた形状像になっています。これは探針が試料に吸着されフィードバック制御が途切れたためと考えられます。一方、SISモードでは横スジのない鮮明な形状像が得られております。
図2-4は溶媒液中で染色体を測定した結果です。DFMモードでは矢印で示した部分で横スジやスパイク状ノイズが見られますが、SISモードではノイズのない奇麗な形状像が得られています。液中測定は大気中と異なり、液体によりカンチレバーの振動を妨げる作用が働き、振動状態の調整や測定パラメータの設定などが難しい測定でしたが、SISモードはパラメータの設定が簡単で安定した測定を実現することができています。
図2-3 粘着材の測定結果(左:DFMモード、右:SIS-DFMモード)
図2-4 溶媒液中の染色体の測定結果(左:DFMモード、右:SIS-DFMモード)
2-3. 位相モードの安定測定
物性測定で最も一般的であるDFM/位相測定は、カンチレバー振動の位相遅れを測定することにより試料表面の吸着や粘弾性などの表面物性を観察することができます。図2-5はPETシート上のラメラ結晶をDFMモードとSIS-DFMモードにより位相測定した結果です。形状像はSIS-DFMモードにより測定した像のみ示しています。DFM/位相像はラメラ結晶の左側が明るく右側が暗くなる傾向があります。これはフィードバックの誤差や探針に水平方向の力が作用したためと考えられます。一方、SIS/位相像ではラメラ結晶部分が明るいコントラストとなっており、形状の影響を受けず正確に観察できています。
図2-6は前節で測定した粘着材の位相測定結果です。DFMモードは形状像と同様に位相像も明瞭な像が得られていませんが、SISモードでは形状像だけでなく位相像も鮮明に観察できています。このように、SISモードは形状測定だけでなく位相測定でもより正確に安定した測定を行うことが可能です。
図2-5 高分子フィルムの測定結果(左:形状像、中:DFM/位相、右:SIS/位相)
図2-6 粘着材の測定結果(左:DFMモード、右:SIS-DFMモード)
2-4. 電流測定モードの安定・高感度測定
電流測定モードは、探針と試料間に電圧を印加し導電性カンチレバーを通してながれる電流を計測することで、試料表面の伝導特性を観察することができます。従来の方法(AFM-CURRENTモード)では、探針と試料が常に接触した状態で測定しているため、試料の変形や引きずりなどが問題となっていました。SISモードでは水平方向の力が作用しないため、軟らかい試料でも変形や横スジの無い安定した測定が可能です。
図2-7は、軟らかい導電性材料をAFMモードとSIS-AFMモードにより電流測定した結果です。AFMモードは、試料が変形してしまっていますが、SIS-AFMモードでは試料が変形することなく形状像と電流像ともに安定した測定ができています。このようにSIS-AFMモードでは安定した電流測定が可能です。
【AFMモード】
【SIS-AFMモード】
図2-7 軟らかい導電性材料の電流測定結果(上:AFMモード、下:SIS-AFMモード)
関連情報
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