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日立ハイテク
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探索事例CASES

実証実験:探索事例CASE02 材料開発はChemicals Informatics®
Materials Informaticsの連携で劇的に進化する

材料はあらゆる産業を支える基礎部材の一つ。常に新しいものが求められ、研究開発が進んでいます。日立ハイテクはこの分野に、情報科学の力で開発プロセスを変える独自ソリューションであるCI(Chemicals Informatics®/ケミカルズインフォマティクス)や、広く注目を集めているMI(Materials Informatics/マテリアルズ・インフォマティクス)の技術を「材料開発ソリューション」というサービスで展開し、より効率的、革新的な材料開発を支援しています。特に、CIとMIを連携した独創的な開発の効率化を進めることで、お客さま企業のさらなる業務効率化・高度化を支援することをめざしています。

その一環として、金属薄膜材料の開発を効率化する実証実験にも成功。日立ハイテクの考えるCIやMIとはどのように利用でき、効果があるのか、またどのような可能性を秘めているのかについてご紹介します。

注目される情報科学の材料開発への活用

今、材料科学、材料開発の世界は、情報科学を活用することで大きな変革を遂げつつあります。一般によく知られているのはMIで、これは「AIや計算科学によって材料開発の効率化をはかる方法」です。具体的には過去に蓄積した実験データや論文などを、AIや計算科学を駆使して解析し、材料の配合率、組成、製法予測などをおこなうことです。

世の中に存在する物質には膨大な種類があるので、めざす性質をもつ物質の配合比率や製造プロセスを人間の直感や経験に依存して探すと、膨大な手間や時間がかかります。MIはこれを大幅に削減できるため、多くの企業が活用し始めています。

競争優位にたつCIの革新性とは

CIは日立ハイテクが開発した独創的な技術をもつソリューションです。MIは、材料の配分比率、製造プロセスの最適化を決める技術ですが、CIはMIが対象とする工程よりも上流工程に当たる、材料を選定する段階で情報科学を用いています。

材料開発に多数のメリットをもたらすCIの優れた点を挙げてみましょう。

① 偶然や経験に頼らない化合物選択が可能

最初の候補物質を選ぶ際、従来のように人間の経験や勘に頼れば、時間がかかり、無駄が多くなります。CIではデータや特許文献を手がかりに目的を達成できそうな物質を選ぶため、開発時間を大幅に短縮できます。

② 実験データのない新規材料の開発に役立つ

例えば耐熱性と柔軟性を兼ね備えた化合物がほしいが、2つの特性がトレードオフ関係にある場合、従来の原料のまま、MIで最適な配合比を追究するだけでは解決が困難な場合があります。

そこで新材料を検討するとした場合、CIが威力を発揮します。CIは特許文献や既存の化合物のデータをもとに目的を達成できそうな化合物を抽出し、類似の事例から合成の可能性について評価することも可能です。つまり過去に実験データの蓄積がなくても開発が可能になります。

予測の元となった特許文献なども提示するため裏づけも知ることができ、それが次の研究開発へのヒントにもなります。

③ 研究開発の成功率を高める

MIやMI関連ソリューションは、原料の最適な配合比の調整やプロセスの効率化に長ける一方で、CIでは、もともと成功確率の高いと見込まれる化合物を選択するため、研究開発の成功率向上に貢献できることが特長です。これは、開発工程の中で最も時間のかかる実験を減らすことにもつながります。

④ 権利関係や調達にも配慮

材料開発は従来、以下のようなプロセスで進むことが一般的です。

[経験や勘に基づく化合物選択]→[実験(合成・評価)]→[権利侵害チェック]

そのため、実験結果が良好で、目的に適した化合物ができたとしても、その後、権利侵害チェックをした結果、使えなくなることもあり得ます。しかしCIであれば、入力時に規制上のホワイトリストから化合物を選ぶといったことも可能です。また原料調達の難易度についても同様のことが言えます。

⑤ 公開データを活用

日立ハイテクのCIは公開データを用います。そのため、お客さま(ユーザー)がデータを準備する必要がありません。

MIでは、データの準備があれば探索できるソリューションが存在しますが、データを収集するには膨大な手間とコストがかかります。一方、データ不要で、文献を探索できるソリューションもありますが、こちらは人間が膨大な文献を読む必要があります。しかしCIならば、データがなく、かつ人間が膨大な文献を読み込まなくても、最適な材料を広範囲から探索できます。

日立ハイテクでは、さまざまな公開データに対し、AIを活用しつつ、自然言語処理をおこない、独自の膨大なデータベースを開発しました。

さらにこのデータベースからお客さまの研究テーマや開発目標に沿って、最適なものを探し出す探索AIも独自に開発しています。これらをクラウドサービスとして提供しているため、お客さま側はデータも、AIスキルも不要で、ブラウザさえあれば利用できるようになっています。

そして、開発の成功率を高めることは、市場投入までの時間(time to market)の短縮となり、収益増につながると言えるでしょう。

CIとMIの連携効果は実証実験で明らかに

日立ハイテクのMIサービスである「材料開発ソリューション」とCIを組み合わせることによって、「材料開発の効率化はさらに加速できる」と考え、金属薄膜材料の開発における実験を通して、その効果を検証しました。その結果、開発工程数を従来の方法に比べて、8割以上削減することができています。これに伴う実験回数の削減によって、CO2の排出量も従来よりも約8割削減することができました。本実証実験の詳細をご紹介します。

従来手法と本実証実験との比較 (表1)

開発期間 実験回数 CO2排出量*1
従来手法の場合 約3年(36カ月) 約160回 1.77t
CIとMIを組み合わせた場合 約2カ月 約30回 0.35t
※当社での検証にもとづく試算値

*1 WBCSD(World Business Council for Sustainable Development:持続可能な開発のための世界経済人会議)が発行する「削減貢献量(Avoided Emission)の算出・報告に関するガイダンス」に基づき算出したもの。削減量の値は、評価条件や評価モデルにより異なる。

金属薄膜材料を対象とした理由は、日立ハイテク自身が開発していたデバイスの検討初期段階にはがれなどの不具合があったことや、異種材料の界面で課題が発生することが多いため、その解決の代表事例の一つになると考えたからです。

製品・対象

温度分布測定用デバイスに用いられる金属薄膜材料

製品は、ガラス(SiO2)基板上にスパッタリングで白金(Pt)の薄膜を形成させたデバイス。白金の抵抗が温度によって変化することを利用して温度分布を測定する。これに使われる金属薄膜材料を開発する。

課題

ガラス基板の表面に直接、白金を堆積させた膜では、はく離する部分が出て、性能を発揮できない。そこでガラスと白金の間に、両方に接着しやすい物質(金属層)をはさむことで解決したい。しかし、しらみつぶしに金属や化合物を試すのでは、膨大な時間、労力が必要になる。

方法

ガラス基板と白金薄膜の間の接着層に適した素材をCIによって発見し、材料の配合比率、製造プロセスの最適条件をMIによって発見する。

〈第1段階 CIによる材料選定〉

CIにより適した金属、元素を選定した。3つのAIから独自の材料データベースを用意し、そこから抽出した。これは特許出願されていない材料の組み合わせも導出できる。

具体的には、ガラス(SiO2)基板に接着しやすい物質を選び(SiO2を「系統A」に入力)、次欄に耐熱性を考えて、シリコンを含めた14種類の高融点金属を入力した。

このCIは入力したもの以外に、似た物質候補を100倍まで増やして探してくれるため、14万通りの組み合わせをCIで探索する。

すると、5分ほどで「SiO2基板によくくっつくのは、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、チタン、イットリウム、シリコン」という答えが得られた。これはSiO2、候補となる金属、強い接着性の3つが、同じ特許にあることで判断される。

(図1)

同様に、白金を「系統A」に入力し、やはり次欄に14種類の高融点金属を入力すると、コバルト、クロム、タングステン、モリブデン、タンタル、チタン、イットリウム、ジルコニウムが出てきた。

つまり共通するのは、コバルト、クロム、チタン、イットリウムである。しかしコバルト、イットリウムは希少で価格も高いため、クロムとチタンが候補となった。ここから試作し、実験した結果、室温ならばチタンだけでも問題がなく、高温にも耐える材料はチタンとクロムの合金であることが判明した。

(図2)

〈第2段階  MIによる最適化〉

クロムとチタンの合金に800℃までの耐久性を持たせるため、クロムとチタンの配合比率、プロセスの最適条件(成膜温度、周囲の酸素濃度、周囲の窒素濃度)を導く。ここからがMIの領域となる。

MIに入力するデータは、実験回数の削減と時間短縮の両方が可能になる分子シミュレーションにて収集した。複数の条件で分子シミュレーションをおこなった結果をMIへ投入し、機械学習による分析を実施。接着強度と配合比率、各プロセスの最適条件を導出した。さらに最適と見なした条件に対してのみ要素実験をおこない、その結果と分子シミュレーションから出たデータの相関を確認している。

これにより、従来のように数多くの実験を繰り返すことなく、最大の接着強度を得られる値を導くことができた。

本実証実験で得られた最適解(表2)

配合比率 0.48(クロム):0.52(チタン)
酸素濃度(%) 0%
窒素濃度(%) 0%
成膜温度(℃) 246℃
接着強度(J/㎡) 0.936J/㎡
※当社実験値

効果

開発工程数を従来の方法に比べて、8割以上削減することができた。また実験回数の削減によって、CO2の排出量も従来よりも約8割削減した。

関連資料
本実証実験以外にも、CIの活用で大幅に開発期間短縮、開発コストを削減した探索事例があります。売上げ規模も試算しており、それぞれ驚くべき数値が示されました。

分析・解析装置を使った結果の深掘りまで一連の開発業務をご支援

日立ハイテクでは、CI、MIをクラウドサービスとしてご提供するだけでなく、研究開発業務で存分に使いこなしていただくためのコンサルティングサービスもおこなっています。また、AIを自社で活用することに不安のあるお客さまには、データサイエンティストによる分析の支援も可能です。特に部材としての化学品を完成品メーカーなどに供給しているお客さまは、多様な要望に短納期で応えなくてはならないため、CIやMIの技術をご活用いただくとその効果をご実感しやすいものと思います。

また、日立ハイテクでは透過電子顕微鏡(TEM/STEM)をはじめとした高度な分析・解析機器もあわせて提供できる点も強みの1つです。開発した材料をTEMやSTEMで解析・測定し、原子配列などを確認したりすることで、「なぜ最適なのか?」といったメカニズムを深掘りして理論化できます。これにより、将来の材料開発に役立つ情報を蓄積していただけるのみならず、材料提供先のお客さまに対して自社材料の優位性を説明するにあたっての裏付けを得ることも可能となります。

このように、日立ハイテクではCIを使った材料の探索から、MIでの条件の最適化、分子シミュレーションでの予測に加えて、分析・解析装置を使った結果の深堀りまで、一連の研究開発業務を支援する技術を提供しています。

また、日立ハイテクは長きに渡り分析・解析装置の提供を通して素材・化学産業の研究開発者の皆さまと共に歩んできた歴史があり、材料開発分野における深い知見を持つことが最大の強みとなっています。ぜひ日立ハイテクを貴社の研究開発のパートナーとして活用いただけますと幸いです。

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