日立ハイテクは、大気と反応しやすい高活性なリチウムイオン二次電池材料の微細構造解析のため、独自の「雰囲気遮断システム」を実現しています。バルク試料を専用ホルダーに搭載し雰囲気から遮断した状態で、イオンミリングによる試料加工及びSEM観察が可能です。この専用ホルダーにより、雰囲気遮断状態を保持したまま、試料をFIB-SEMで薄膜状態に加工が可能です。さらに薄膜試料搭載用雰囲気遮断ホルダーに載せ換えることで、STEMによる観察・分析が行えます。雰囲気遮断システムは、試料を大気と接触させることなく広範な倍率範囲での観察分析を可能にします。
超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡
リチウムイオン二次電池に用いられる炭素材料や高分子材料の研究開発に不可欠な、
超高分解能走査型電子顕微鏡です。高輝度コールドFE電子銃と検出信号制御機能により、高コントラスト像を高い分解能で提供します。
光学系の自動調整機能やデータ取得自動化を支援するオプション機能を搭載し、大量データの自動取得を可能にしました。
SEM像取得を自動実行するソフトウェアEM Flow Creatorを用いてセパレータの自動連続撮像を行いました。今回は、倍率5千倍、3万倍、8万倍で視野を変えながら、それぞれ5枚ずつ合計345枚、3時間36分で明瞭なSEM画像を取得することができました。5千倍ではセパレータの繊維状領域の分布、3万倍ではセパレータの繊維状の構造と孔が交互に並ぶ様子、8万倍ではセパレータ表面の微細構造を確認できています。
超高分解能ショットキー走査電子顕微鏡
リチウムイオン二次電池に用いられる炭素材料や高分子材料の研究開発に不可欠な、
超高分解能走査型電子顕微鏡です。ショットキーFE電子銃搭載により、極低加速電圧観察から大照射電流を要する高速分析まで幅広い解析手法に対応します。
光学系の自動調整機能やデータ取得自動化を支援するオプション機能を搭載し、大量データの自動取得を可能にしました。
照射電圧10Vで観察したLIB正極材のSEM像です。(a)では、活物質、導電助剤、バインダーを形状やコントラストによって明瞭に識別できています。(a)中の赤枠領域を拡大観察した(b)では、導電助剤と活物質がバインダーを介して結着している様子や、活物質表面に薄く付着したバインダーの残渣を詳細に確認できています。静電界磁界重畳型対物レンズを採用したSU8700では、このような極低加速での最表面観察も容易に行うことができます。
イオンミリング装置
ArBlade® 5000は、断面ミリングと平面ミリングに対応したハイブリッドイオンミリング機能を装備した日立ハイテクの最上位機種です。リチウムイオン二次電池の正極材や負極材などの評価に必要な試料作成のための、あらゆる機能を搭載。雰囲気遮断断面ミリングホルダーは、大気中の酸素や水分と反応して形状が大きく変化してしまうリチウムイオン二次電池材料のために開発。試料を大気と接触させることなく、イオンミリング加工後にSEM観察が可能です。イオンビームによる変質のおそれのあるリチウムイオン二次電池材料の試料作成のためには、冷却温度調整機能(オプション)を装備しています。
雰囲気遮断断面ミリング機能で加工したリチウムイオン電池負極材のSEM像(a)と雰囲気遮断の効果を確認するために加工した試料を約15分間大気に曝した後のSEM像(b)。(a)ではグラファイト粒子の構造が確認できますが、(b)は大気中の水分や酸素に接触したことにより反応生成物に覆われています。これにより雰囲気遮断ミリングホルダーの効果が確認できます。
SEMとAFMによるコリレーション分析
日立ハイテクの独自の技術「SÆMic.(セイミック)」は、SEMとAFMのコリレーション分析を可能にしました。同一の観察箇所で、SEM(走査電子顕微鏡)による形状、組成、元素分析などと、AFM(走査型プローブ顕微鏡)による3D形状計測と力学的情報、電磁気物性情報を同時に解析評価することが可能です。
〈表面解析〉中型プローブ顕微鏡システム
AFM5500MⅡは、鋭い針で試料表面を走査し、高分解能に3次元形状を観察できる走査型プローブ顕微鏡です。形状以外にも試料の粘弾性や吸着性などの力学物性、表面電位や導電性などの電磁気物性の差異をマッピングすることが可能です。
LIBの高性能化の課題の1つが内部抵抗低減です。ここでは、プレス条件を変えた2種のLIB正極について、イオンミリング断面の同一箇所をSSRMおよびSEM-EDX測定した結果について説明します。
今回の試料は、交流インピーダンス法でもプレス品のほうが内部抵抗が低いことが示されており、1) 局所で観察・分析したSSRM/SEM-EDXの結果とも対応していると考えられます。
1) H. Nara et al., Journal of power sources, 409 (2019) 139–147.
電界放出形透過電子顕微鏡
透過電子顕微鏡で培ってきた技術を結集・融合。0.078nmのSTEM空間分解能や、高角度試料傾斜、大立体角EDS(エネルギー分散形X線分析装置)を、シングルポールピースで実現しました。リチウムイオン二次電池の開発・製造分野をはじめ幅広いユーザー向けに、サブÅレベルの空間分解能と高分析性能を、より多様な観察・分析手法とともに提供します。
成形された全固体電池試料をFIB-SEMで薄膜加工し、雰囲気遮断およびその場観察システムを用いて、大気中での劣化過程を解析しました。(In-situ 観察)
リアルタイム3DアナリティカルFIB-SEM複合装置
NX9000は、SEMとFIBを直行させることで3次元構造解析に最適化されたシステムです。高精度加工/観察を繰り返すことで、試料の微細構造を3次元に捉えることができます。電極などの各粒子の分布などを立体的に解析することが可能です。
サンプリングする微小試料片の標準的な大きさは、10μm(横)×3µm(縦)×10µm(深さ)程度。この操作は、高真空に保持されたFIB-SEMの試料室内で、FIBとSEMで観察しながら行います。
FIB-SEMへの試料搬送に使用する薄膜試料搭載用雰囲気遮断ホルダーは、試料ホルダー先端の遮断シリンダをスライドさせることで、試料搭載部を不活性ガスまたは真空雰囲気に保持できます。また、液体窒素による冷却対応タイプも準備。試料加工中の熱ダメージを低減します。