マテリアルズ・インフォマティクス
目次
MIとは
MIとはマテリアルズ・インフォマティクス(Materials Informatics)の略です。
膨大な実験データ・材料データ、AI(機械学習・ディープラーニング)などを活用し、情報科学・計算科学の手法を用いて、材料開発を効率化する取り組みを指します。
MIの歴史は2011年にアメリカで、データ駆動型材料開発(MGI)を開始したのが始まりです。その後、世界的に広がりました。
日本では2015年に「情報統型物質・材料開発イニシアティブ」が発足し、2017年に日立製作所が材料開発ソリューションを提供開始しました。*1
MIはデータ駆動型の開発になるため、これまでのような経験や勘ではなく、データをもとに次の一手を打てるようになるのです。材料開発だけでなくさまざまな分野で利用でき、開発の効率化を期待できます。
従来の開発手法とMI導入後の違い
これまでの材料開発は、研究者の知識や経験に基づいた勘から実験計画を設計し、実験を行い、特性を評価する方法が主流でした。
しかしこの方法は、特定の研究者以外に再現性がなく属人的であることや、実験回数が多くなるためコスト・時間がかかるというデメリットがあります。
マテリアルズ・インフォマティクスは過去の実験データから計算科学の手法を用いて、実験を行わないで目標性能を予測できます。
過去の実験データには、材料や素材の配合比や、プロセス条件などが含まれます。これらをもとに、機械学習モデルを構築し、実験計画補を策定することが可能になるのです。
データ駆動型なので特定の研究者でなくても行え、時間やコストを大幅に削減できる手法です。
MIの課題
マテリアルズ・インフォマティクスを使った開発を実践するうえで、よくある課題は「データ量の不足」「データの質が不十分」というものです。
そのため「MIのために今すぐデータを準備できない」といった導入ハードルを抱えるケースもあります。
これらの課題を解決するために、データの補完が必要になります。
日立ハイテクの材料開発ソリューションでは、公開特許や論文からデータ化するテキストマイニングや、シミュレーション・記述子などを用いることでデータの補完は可能です。
また材料開発におけるデータベースを導入する企業も増えてきました。
各自がバラバラに保存しがちなデータを一元化し、データ共有の効率化を行い、データサイエンスの観点から分析を行いやすくし、MIに活用することで新たな材料開発を進められます。
MIが活用されている分野
- 素材開発 化学(有機・無機):工業部材の最適な配合
- 製品開発:半導体(ウェハー・フォトレジスト 等)リチウムイオン電池(正極材・電解質・セパレーター等)
- 医療:レントゲン・MRIなどの画像解析・義肢装具開発 等
- 医薬品:バイオ医薬品開発・ゲノム創薬 等
- 水産・海洋資源:水産養殖の効率化・計測技術 等
- 農業:次世代作物 等
上記は一例ですが、世界中のさまざまな分野でMIは活用されています。
MI×SDGS
マテリアルの開発は、SDGsの達成に欠かせません。
持続可能な社会を実現するためには、カーボンニュートラル・脱炭素社会に向けたマテリアルの革新が必要です。
Society5.0の実現、研究基盤の強化とDX化、GXによる経済成長や環境保護は、MIは不可欠な要素となります。
例えば環境にやさしいバイオプラスチックや生分解性プラスチックの開発や、エネルギーの輸送・転換材料の開発などをスピーディに推進するには、従来の開発方法から変革が必要になってくるのです。
また企業も長期にわたって経営を持続していくために、属人的なこれまでの開発手法から、データドリブンの開発にシフトすることで、人材の問題を解決する糸口にもなります。
持続可能な社会を実現するために、MIは切っても切り離せないソリューションといえるでしょう。
参考資料
MI(マテリアルズ・インフォマティクス)を活用した成功事例
MI(マテリアルズ・インフォマティクス)は開発の効率化ができるだけでなく、新しい革新的な開発の一助を担っているため多くの注目を集めています。
日立ハイテクの強み
日立ハイテクは、世界27ヶ国で様々なサービスを展開しており、このグローバルな販売ネットワークを起点に、海外に拠点をお持ちのお客様にも材料開発ソリューションを提供することができます。