SU8600/SU8700 FE-SEM Improved Automatic Acquisition of Large Volumes of Data Contributes to Increased Throughput
立花 繁明
FE-SEMは、得られる画像の分解能が高く、またその情報の豊富さや試料の取り扱いが比較的簡便なことから、ナノテクノロジー、半導体・エレクトロニクス、ライフサイエンス、材料などの幅広い分野において、微細構造の観察から計測、分析まで多岐にわたって活用されています。近年のマテリアルズ・インテグレーションをはじめとしたその活用分野・用途の広がりに伴い、大量データの短時間取得やそれに要する負荷の低減が求められています。
こうしたニーズに応え、2021年12月に発売したSU8600/SU8700では日立ハイテクがこれまで培ってきた高分解能FE-SEMとしての性能に加えて、大量データ取得を支援する自動化機能を強化しています。
今後、多くのデータを必要とするデータ駆動型研究開発の進展が予想される中、本製品群により大量データの短時間取得やユーザーの負荷低減を支援します。
図1 SU8600(左)、SU8700(右)の装置外観写真
FE-SEMの観察や分析では対象や目的に応じて観察条件を変更し、その度に電子光学系条件を調整する作業が生じます。調整に要する時間はユーザーの熟練度によって異なり、このことがデータの質やスループットのばらつきを生じさせる一因になっています。SU8600/SU8700には、電子光学系の調整作業を自動化する機能が搭載され、安定した光学条件維持を可能にしています。
装置の性能向上に伴い求められるデータの種類や量も増大している中、多種多量のデータを手動で取得することもユーザーの負担を増大させています。SU8600/SU8700にはレシピ作成を可能にするオプション「EM Flow Creator」を搭載し、ユーザー毎の取得条件に応じた自動データ取得を可能にしています。
連続データ取得の際に任意の場所で検出器を変更して画像取得するなど、目的に応じたレシピ作成を行うことで自由度の高い自動データ取得が可能になります。
SEMの機能・性能向上に伴い、得られる情報量も増加しています。これらの情報を極力多く表示させるため、SU8600/SU8700では表示機能も強化しています。
図2 複数の検出器の画像(5チャンネル)とカメラナビゲーション画面を同時に表示した操作画面(試料:太陽電池)
*画面はSU8600のもの
40,960×30,720画素数で撮影した図3の左画像の枠線部をデジタル拡大したのが図3の右の画像です。約120 μm 幅の広い領域から神経細胞のオルガネラなどの内部構造が確認できる像質を維持して観察されています。
図3 ラット 大脳皮質の高精細キャプチャ事例
*画像はSU8700で取得
試料ご提供:自然科学研究機構 生理学研究所 脳機能計測・支援センター 電子顕微鏡室・窪田グループ 窪田 芳之 先生
低加速観察ではエミッターの輝度が重要になります。SU8600では高輝度の電界放出型エミッター(CFE)を搭載することにより、低加速条件下でも超高分解能画像の取得を可能にしています。
高効率に信号を検出するExBフィールドを鏡筒内に実装することで、セミインレンズ型対物レンズで収集した信号電子を効率的に検出します。短WD での高分解能観察に効力を発揮します。
SEM観察では試料から多様な信号が放出されますが、それらを極力多く取得するため、SU8600では検出器オプションを増強しています。
図4 SU8600の鏡筒断面及び検出器配置図
*はオプション検出器
新規開発されたシンチレータ型反射電子検出器(OCD) を用いた観察では応答速度の向上により、観察部位を特定しやすくなりました。図5の画像の取得時間は1秒未満ですがSRAM の下層配線とFin-FET の構造が確認できています。
図5 5 nm プロセスSRAM下層配線観察事例
ショットキーエミッターはCFE に迫る高輝度を有するとともに、照射電流量と安定性に優れています。これを電子銃に搭載することでSU8700は以下の観察手法を実現しています。
SU8700は試料ステージにバイアス電圧を印加せずに最低100 V の加速電圧設定が可能です。試料形状などの都合でステージバイアスを印加するのが難しい場合でも極低加速電圧観察が可能です。
各検出器の信号取得を同一WD(=6 mm) で行えるよう、光学系・検出系を設計しておりスループットの向上を図りました。EDS もWD=6 mm で測定可能なため、観察と分析を同一WD で実施することも可能になっています。
図6 SU8700の鏡筒断面及び検出器配置図
*はオプション検出器
鋼の焼き戻しマルテンサイト組織を二次電子信号で観察した像( 図7 左/UD 像) では析出物の分布状況が高コントラストで確認できており、また同条件で反射電子信号を取得した像( 図7 右/PD-BSED 像) ではチャンネリングコントラストにより各結晶粒のサイズや歪みが反映された情報が得られています。
図7 多角的な観察を可能にする検出系
試料:鋼の焼き戻しマルテンサイト組織
ご提供:東京大学 南部 将一 様
SU8600、SU8700はそれぞれの光学系、検出系の特長により、得られる情報量の増加を図るとともに観察・分析手法を拡張しています。
両機種ともに光学条件調整やデータ取得について自動化機能を強化して多種多量のデータの取得を支援し、これからの時代に求められる解析業務をサポートします。
著者紹介
立花 繁明
(株)日立ハイテク コアテクノロジー&ソリューション事業統括本部 解析システム営業本部 解析企画部