液体クロマトグラフ(HPLC)基礎講座 第7回 各種検出法の特長(1)
使用頻度の高い検出器を中心に、原理と特長を紹介します。
今回はUV/UV-VIS検出器とDADです。
UV/UV-VIS検出器
最も多く使用されている検出器で、紫外・可視域に吸収を持つ成分が測定対象となります。 UV検出器は重水素放電管(D2ランプ)を光源とし、190nm~380nmの範囲を中心に用いられます。さらに長波長まで検出したい場合は、タングステンランプ(Wランプ)を追加したUV-VIS検出器を用います。
図1に光学系を示します。回折格子にランプの光を当てると、波長の順に光が分散されます。例えば280nmで測定する場合は、フローセルに280nmの光が当るように、回折格子の角度が調節されます。フローセルの前で光を分け、リファレンス光をモニターすることで、フローセル前後の光の強度変化を検知することができ、これを吸光度として出力します。
紫外/可視域に吸収を持つ成分は非常に多いのですが、成分により極大吸収波長が異なるので注意が必要です。少量でもモル吸光係数が大きな成分はピークが大きくなるため、ピークの大小では濃度の高低は判断できません。また、通常は1波長に固定して測定を行いますが、どの成分も高感度で検出したい場合は、タイムプログラム機能を使用して、分析の途中で各成分の極大吸収波長に切り替え ながら測定することも可能です。
ダイオードアレイ検出器(DAD)
フォトダイオードアレイ(半導体素子)を検出部に使用しています。やはりUV-VISの吸収を検出しますが、UV-VIS検出器ではサンプル側の受光部が1つしかないのに対し、DADではフォトダイオードアレイをたくさん並べることにより(L-2455/2455Uでは1,024個)、広い波長範囲の情報を一度に取り込めることが特長です。 イメージとしてはHPLCで分離しながら、送液を止めることなく1秒以下の間隔でスペクトルを測定していることになります。固定波長の測定では成分同定は保持時間だけが頼りなので、時間が少しずれると同じ成分なのか別の成分なのか判断に迷うことがあります。このような時DADを使えばピークトップのUVスペクトルを比較することにより、同じ成分かどうか判断することができます。
図2にDADの光学系を示します。
UV-VIS検出器と異なる点は、ランプの光をそのままフローセルに当て、通過した光を回折格子で分光し、フォトダイオードアレイで各波長の光量を検知していることです。
UV-VISに比べ光量が少ないためノイズが大きい、リファレンス光が取れないため、ランプのゆらぎなどさまざまな変動による影響を受けやすいという欠点もありますが、近年装置の改良が進んでUV-VIS検出器との性能差は小さくなっています。
DADによる測定結果は図3のような等高線図で示されます。指定のクロマトグラムによる定量計算以外に、ピーク純度チェック、ライブラリ検索など便利な機能があります。
検出波長が254nmなのはなぜ?
昔のUV検出器の光源には水銀ランプが用いられていました。このランプは253.7nmに輝線(特にエネルギーが高い波長)を持つので、254nm波長固定の検出器として利用していたのです。幸いベンゼン環を持つ成分はこの波長を吸収することが多いため、固定波長でもかなりの試料をカバーすることができました。今でも時々254nmという検出波長を見かけるのはその名残なのです。
現在UV検出器の光源はほとんどD2ランプとなっており、波長も可変です。測定に求められる感度も高くなっていますので、単純にどの成分も254nmで測定するのではなく、それぞれの成分の極大吸収波長を設定するのが一般的です。
さて、D2ランプの輝線はどこにあるでしょう?答え:656.1nmです。このあたりではほとんどエネルギーがないのですが、この波長だけエネルギーが高いのでそれを利用して検出器の波長ズレをチェックしています。L-2000シリーズの検出器は波長校正用に水銀ランプを装備し、紫外域でも波長をチェックしますので、精度良く管理することができます。