液体クロマトグラフ(HPLC)基礎講座 第3回 HPLCの原理とシステム構成(3)
HPLCの装置構成
HPLCは送液部、試料注入部、分離部、検出部、データ処理部から成り立っており、どれを欠いても分析ができません。
送液部
溶離液を一定流量で圧力変動なく送液することが要求されます。送液流量範囲により、セミミクロポンプ、分取ポンプなどいくつかのバリエーションがあります。
また、溶離液に接する部品は一般にステンレスを用いていますが、耐薬品性を高めるため樹脂を用いたイナート対応ポンプも使用可能です。目的に合わせて選択します。
試料によってはグラジエント法を用いて分析します。アミノ酸分析のように試料にたくさんの成分が含まれる場合、一種類の溶離液で全ての成分をうまく分離するのは至難の業です。
そこで途中で組成を変えながら分析する方法が考えられ、これをグラジエントとよんでいます。
直線的に濃度勾配をかける場合を指すことが多く、ある時間で階段状に溶媒を切り替える場合はステップワイズとよんで区別しています。また、組成を変えないで分析する場合はアイソクラティック(イソクラ)とよびます。
図2にグラジエント分析法のメリットを示しました。 溶離液Aでは早く溶出する成分の分離は良好ですが、遅れて溶出する成分はピークがブロードになったり、カラムに残り溶出されません。
溶離液Bに切り替えると、遅れて溶出する成分のピークはシャープになりますが早く溶出する成分は分離が不十分です。 このような場合にグラジエント法を用いて溶離液AからBに組成を変化させると、全体の分離を改善することができます。
【グラジエントの混合方式】
低圧と高圧の二つの混合方式があります。
低圧混合方式:電磁弁により吸引する溶離液を切り替え、1台のポンプで混合する方式です。システム価格は安価で、4液まで混合可能です。
高圧混合方式:2台のポンプを用意し、ポンプから吐出した後に混合する方式です。混合部からカラムまでの容量が少ないので、グラジエントの応答性が良好です。ポンプの台数が増えるため、システム価格は上がります。
試料注入部
試料を流路に注入する部分です。 手動で注入するマニュアルインジェクタと、自動注入が可能なオートサンプラがありますが、どちらも常に圧力がかかっている流路に試料を注入するため、6方バルブを利用しています。マニュアルインジェクタは図3のようにノブを切り替えることにより、試料がカラムに送られます。
(1)試料注入の際は左のようにノブを「LOAD」の位置に切り替えます。この 時サンプルループ部分は流路から切り離されるので、マイクロシリンジを用いてループの中に試料を注入します。
(2)この後ノブを「INJECT」に切り替えると、ポンプからループを通って溶離液が送液され、試料がカラムに流れます。オートサンプラは同様な動きを自動化することにより、無人でも連続運転が可能となります。
分離部
カラムは試料、分離目的に合わせて選択します。カラムオーブンはカラムを一定温度に保つために使用します。
温度が変動すると成分が溶出する時間が変わり、定性・定量を正しく行うことができません。温度は25~50℃の範囲に設定して分析することが多いです。
検出部
カラムから溶出した成分を検出し、電気信号に変換します。試料に合わせて選択します。
UV検出器 | 光源はD2ランプで、主に400nm以下の紫外部に吸収を持つ成分の検出に用います。 |
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UV-VIS検出器 | 光源にD2とWランプを使用します。可視領域までカバーできるので色素、染料など着色成分の検出に有効です。 |
ダイオードアレイ検出器(DAD) | 紫外から可視光のスペクトル情報も収集します。 |
蛍光(FL)検出器 | 蛍光物質を高感度・選択的に検出します。 |
示差屈折率(RI)検出器 | 屈折率の変化を検出します。紫外吸収のない成分も検出できますが、感度は低いです。 |
電導度検出器 | 導電率をモニタすることにより、主に無機イオンを検出します。 |
その他電気化学検出器(ECD)、蒸発光散乱検出器(ELSD)、Corona®荷電化粒子検出器(CAD)なども使われています。またHPLCで分離後に質量分析計で検出するLC-MSも、高感度、選択的な検出が可能なため、普及がすすんでいます。
データ処理部
検出されたピークの面積または高さから濃度を計算し、レポートを作成します。従来は手軽に使用できるインテグレータが主流でしたが、近年はPCで装置の制御と結果解析を行うシステムが中心となっています。
* CAD, Corona, Coulochem, CoulArray, Cat-a-Phase and ESA are registered trademarks ® of Dionex Corp.