TA No.96 |
- 結晶性高分子の結晶化度の評価
代表的な結晶性高分子であるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)またはポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子は、分子鎖が規則正しく配列した結晶部と、ランダムに絡み合った状態で存在する非晶部が混在しています。結晶部と非晶部の割合は、高分子の種類によって異なるとともに、同じ高分子でも熱履歴の影響などによって変わってきます。この結晶部の割合を結晶化度と言い、繊維やフィルムまたは射出成形品など各種材料の機械的強度や熱的性質等の諸特性を左右する重要な高次構造因子です。結晶化度の評価方法としては、密度法、広角X線回折法、FT-IR法、固体NMR法、または熱分析法など様々な方法が用いられています。ここでは熱分析による結晶化度の評価の例として、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、およびポリエチレンテレフタレート(PET)について、DSCによる融解の測定結果より、それぞれの高分子の平衡融解熱量を用いて結晶化度を求めた例を紹介しています。
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TA No.95 |
- 熱分析によるリサイクルポリマーの評価
資源の有効利用や環境汚染の防止を目的として、プラスチック製品のリサイクルへの取り組みが国内外で活発になっています。リサイクルには、粉砕、異物除去したものを溶融・成型するマテリアルリサイクルや、化学的に分解して再重合するケミカルリサイクルなどがあります。このような工程を経ることで、不純物の混入、分子量の変化、結晶構造の違いなどが起こり、バージン品と性質が変わることが懸念されています。熱物性としてはガラス転移温度、融解温度、結晶化温度、熱分解温度などが変わる可能性があり、熱分析により最終製品に適した材料の選定、加工温度条件の検討などが可能です。ここでは、リサイクルPETとバージンPETの混合割合が異なる3種類のPET成形品を、DSC測定および試料観察TG測定により熱物性の違いを評価した例を紹介しています。
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TA No.94 |
- ポリアミドのDSC測定
ポリアミドは、主鎖がアミド結合(—NH—CO—)で規則的につながった線状ポリマーの総称で、一般には「ナイロン」の名称で知られています。ポリアミドは代表的な汎用エンジニアプラスチックの一種で、ナイロン6とナイロン66を中心に、自動車、機械、電気・電子、またはスポーツ用品や日用品にいたる幅広い用途に利用されています。ここでは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12の7種類のポリアミドについてDSC測定例を紹介しています。ポリアミドの種類によってガラス転移温度や融解温度に違いがみられています。またポリアミドの融解温度は、主鎖中に含まれるアミド結合の割合と関係があり、DSCによる各ポリアミドの融解温度の測定結果とアミド結合の割合を調べた例を紹介しています。
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TA No.93 |
- カーボンブラック配合量の異なるブレンドゴムのDSC、TMA、熱拡散率測定
一般的に出回っているゴム製品は、複数種のゴムを混ぜたブレンドゴムがほとんどで、ゴム単体では満たされない性質を補いあっています。ゴムの主成分以外にも様々な成分がゴム製品に配合されており、中でもカーボンブラック(CB)はゴム自体の強度や耐摩耗性の向上のため等によく加える成分の一つです。ここでは、CB以外の配合と作製方法を同一にした天然ゴムとブタジエンゴムのブレンドゴムを用いて、CB配合量の違いによってガラス転移温度、平均線膨張率および熱拡散率が変化する例を紹介します。
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TA No.92 |
- プリント基板の熱分析
プリント基板は電気製品の主要な部品の一つであり,エポキシ樹脂などの絶縁板の上に電子部品や導電膜が固定して配置されたものです。通電作動時には熱を受ける使用環境となり,熱膨張や軟化により,配線された導電膜を破損することがあります。このため高温環境下において寸法変化が小さく,強度が高いガラス繊維強化エポキシ樹脂基板が使われ,その膨張率や軟化温度などの熱特性は重要な評価対象となります。ここでは,ガラス繊維強化エポキシ樹脂基板について,熱機械分析(TMA),動的粘弾性測定(DMA),示差走査熱量測定(DSC),熱重量測定(TG)で熱特性を評価した例を紹介します。
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TA No.91 |
- 小麦粉、米でん粉のDSC測定 -水分量と粒度がおよぼす糊化への影響-
小麦粉や米をはじめとしたでん粉食品は、水を加えて加熱すると膨潤して粘度が増し、糊状に変化します。これを“糊化”と呼びます。でん粉の構造は、主として多糖であるアミロースとアミロペクチンの2成分からなる規則性をもったミセル構造を有しています。糊化が開始すると、緩んだミセル構造に水分子が入り込み、不規則な構造に変化します。糊化の特性は、でん粉の濃度や吸水性、膨張性、アミロースとアミロペクチンの含量比や鎖状分布など、さまざまな要因で変化することがわかっています。DSC装置は糊化に伴う小さな吸熱・発熱反応を精密に測定でき、食品の食感調整や製粉技術の改良などに利用されています。ここでは、小麦粉を用いた糊化の水分量依存と、米を用いた糊化の粒度依存を調べた例を紹介します。
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TA No.90 |
- 紫外線硬化型接着剤の硬化反応熱測定
短時間で硬化する紫外線硬化型接着剤は、電気・電子、オプトエレクトロニクス、医療、ガラス工芸、建築などの広範囲な分野において使用されています。紫外線を照射したときの硬化反応熱は、示差走査熱量計(DSC)と紫外線照射装置を用いることで、リアルタイムに計測することが可能ですので、照射強度、照射時間の関係を調査し、硬化に必要な条件を検討することができます。今回測定に用いた試料は、市販の紫外線硬化型接着剤で高粘度の透明褐色液体です。プラスチックの接着に良好で、LCDパネルやプリント基板、フレキシブル配線などで固定やシール等に使用されます。また、金属やガラス部品の接着、シーリング、コーティングにも適している接着剤です。一液型の構造用接着剤で、紫外線により硬化するほか、加熱によっても硬化します。ここでは、DSCと紫外線照射装置により、硬化反応に必要な照射強度、加熱温度を検討した結果を紹介します。
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TA No.89 |
- 熱可逆変色性インキのDSC測定
近年、消しゴムで消すことが可能なボールペンや、摩擦熱によって書いた文字を消すことが可能なボールペンが市販されています。特に摩擦熱で文字を消すボールペンは、摩擦熱によってインキを透明化することにより、消し残りがほとんどない、消しカスが出ないといった特徴があります。また、冷凍庫に入れると再び文字が現れるという特徴もあります。今回は加熱・冷却によって色彩が変化する熱可逆変色性インキのDSC測定例を紹介し、色彩の変化と熱特性の関係について解説します。
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TA No.86 |
- ポリプロピレンのDSC測定 -熱処理による高分子結晶性への影響-
結晶性高分子であるポリプロピレン(PP)は、安価で、成形性が良く、耐水性、耐薬品性、強度に優れることから、食品包装材をはじめ、電気製品や医療材料、自動車部品、合成紙などに広く用いられている汎用樹脂です。PPの成形加工においては、熱処理温度や冷却処理条件によって結晶形が変化し、強度や耐熱性、圧着性に差異が生じます。食品向けの用途では、パッケージ後に加熱殺菌処理が行われることもあります。このため、目的に合わせた結晶状態の制御や、熱処理による結晶性への影響を把握することは重要となっています。今回は、PP成形品の結晶性について、示差走査熱量計(DSC)で評価した例を紹介します。
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TA No.85 |
- チョコレート,バターなどの固体脂量の推定-DSC測定により食品用油脂のおいしさを科学する-
食品は、安全性や品質について様々な角度から分析が行われています。食品の主要な構成成分である油脂は、融解温度が低く、結晶形が多数存在します。そのため、一度融解させた油脂はどのような結晶形に変化するのか、室温においてどの位の固体状の油脂が存在しているのか等によって、硬さや滑らかさといった特性が決まります。このような油脂食品では、製造過程や保存環境を考慮して、目的の結晶形や固体脂量に制御することが重要です。これらを評価するために、示差走査熱量計(DSC:Differential Scanning Calorimeter) を用いて油脂の融解温度測定が行われています。ここでは油脂を主成分とした食品として、チョコレート、バター及びマーガリンの測定例を紹介します。
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TA No.83 |
- 鉛フリーはんだのDSC測定-微量Niによる融解温度依存評価-
近年、EUのRoHS指令に続き中国版RoHSも施行になり、有害物質規制が世界的に拡大しています。その中で鉛フリー実装が実用化され、従来のスズ-鉛系はんだから鉛フリーはんだへの切り替えが進み、スズを母材とした種々の共晶合金が研究されています。鉛フリーはんだの利用においては、融解温度が高いことにより実装部品の耐熱性が問題となります。また、融解温度よりも充分に高い温度でのはんだ付け作業でなければ、接合不良の原因となります。このため、作業性、機械的特性、コストなど、様々な特性を考慮し組成が決定されていますが、組成による融解温度の差異を調べることは、作業条件を検討する上で重要となっています。今回は、Ni組成比の差異が及ぼす鉛フリーはんだの融解温度依存を、示差走査熱量計(DSC)で評価した例を紹介します。
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TA No.81 |
- ポリ乳酸の熱分析 -結晶性と耐熱性-
近年、廃棄物処理問題や環境保全の観点から、再生可能な資源から生産され、生分により循環可能となる生分解性プラスチックが注目されています。中でも植物由来の生分解性プラスチックであるポリ乳酸(PLA)は、包装材や、繊維、医療用と広く用いられていますが、用途に応じて必要とされる強度、耐衝撃性、透明性などが異なり、生分解性にも影響することから、その結晶性は重要であるとされています1)。さらに、構成モノマーである乳酸は不斉炭素を持つことから光学異性体が存在し、それら重合体の異性体比は分子量とともに、結晶性および耐熱性に影響するため、成型加工条件検討の要素となっています。今回は、異性体比および分子量の異なるPLA樹脂の結晶性と耐熱性について、DSCおよびTGを用いて測定した結果を紹介します。
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TA No.80 |
- キャンディの熱分析 -キャラメルとチューイングキャンディ-
熱分析は食品の分野においても、原材料の結晶性や融解温度の分析のほか、熱安定性の評価など、広く活用されています。また、加工食品では複数の食品素材による混合物となるため、原材料単体の物性がそのまま反映されるとは限らず、それら成分比を変えることによって、特性が異なる場合があります。今回は、キャンディに分類されるキャラメルとチューイングキャンディについて、示差走査熱量測定(DSC)、および動的粘弾性測定(DMA)により、特性評価を行った結果を紹介します。
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TA No.79 |
- 医薬品のDSC測定 -結晶多形と結晶性-
示差走査熱量測定(DSC)は、日本薬局方の一般試験法として加えられており、医薬品の熱物性評価に広く活用されています。医薬品を構成する有機化合物は、結晶多形を持つものや、精製、粉砕といった加工処理により結晶性が異なる可能性のあることが知られています。これら結晶多形や結晶性は、薬効や製剤の安定性に影響するため、医薬品開発においてその差異を明らかにしておくことが重要です。また、結晶多形および結晶性は温度変化の影響を受けるため、これら熱物性を把握する上でDSCは不可欠とされています。今回は、抗てんかん剤であるカルバマゼピンと、利胆薬であるウルソデオキシコール酸を測定し、結晶多形および結晶性の差異を確認した結果を紹介します。
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TA No.74 |
- 鉛フリーはんだの熱分析
現在、スズ鉛合金系はんだからの切り替えが進む鉛フリーはんだは、スズを母材とする多数の合金系の中から、様々な特性のバランスを考慮して採択されています。評価項目として、融解温度、酸化性、機械的特性、コストなど様々な要素がありますが、実際の作業条件を設定する上では、熱特性の調査は重要となっています。ここでは、鉛フリーはんだを各種熱分析手法で測定した例を紹介します。
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TA No.68 |
- ポリスチレンのDSC測定 -ガラス転移におよぼす分子量の影響-
PS(ポリスチレン)は、代表的な汎用樹脂の一つとしてさまざまな分野で広く利用されています。PSの物性を大きく左右する構造因子の一つとして、分子量があげられます。一般に分子量を大きくすることにより、剛性、強度の高い材料が得られるものの、その反面加工性が低下するため、目的や用途に応じて適度な分子量が選ばれます。工業材料として広く使用されている市販のPSの分子量としては、重量平均分子量(Mw)として15万~40万位が一般的です。 一方、高分子のガラス転移は、鎖セグメントの平進運動が開始することに対応しており、ガラス転移温度(Tg)は基本的には分子量に依存しないことになります。しかしながら重合度が低い分子量域では、鎖末端の影響によりTgは低下することが知られています。今回は、DSCにより分子量の異なる単分散PSのTgを測定した結果を紹介します。ここでは、比較的低い分子量領域を中心に、重量平均分子量(Mw)として1940から95000までの8種類の単分散PSについて測定した結果を報告します。
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TA No.65 |
- ポリ塩化ビニルの熱分析 -ガラス転移におよぼす可塑剤の影響-
PVC(ポリ塩化ビニル)は、代表的な汎用樹脂の一つとして、パイプや電線被覆材などの産業資材から、各種のフィルムやシートなどの一般消費材にいたるまで、幅広い分野で利用されています。PVCが他のポリマーと異なる特徴の一つに、可塑剤の添加によって広い範囲で最終製品の硬さや柔軟性を調整できることが挙げられます。 DSCやTMAでは、PVCを可塑化した際のガラス転移の変化を評価することができます。今回は、可塑剤としてDOP(フタル酸ジ-2-エチルヘキシル)を用い、DOPの濃度の違いによるPVCのガラス転移温度の変化を、DSCおよびTMAにより測定した例を紹介します。
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TA No.64 |
- 温度変調DSC法の紹介
現在DSC(示差走査熱量測定)は、熱分析法の中でもポリマーをはじめ薬品、金属等あらゆる材料の物性評価に最も多く利用されている手法です。通常DSC測定では、一定速度の昇降温過程において、試料と基準物質への熱流の差を検知しており、融解・結晶化等の温度及び熱量を求めることが可能です。一方、ACカロリメトリー法は試料を継続周期的に加熱し、その時の試料の振動温度を測定することにより、試料の比熱容量を測定する手法で、長年にわたって研究が行われています。このACカロリメトリーで行っている交流の温度制御技法と、DSCの一定速度の温度制御技法とを組み合わせると、温度変調DSCの温度制御となります。すなわち、試料の温度は一定の昇温速度で加熱されながら、交流の温度変化(サイン波状の昇降温)を繰り返すこととなります。これにより従来のDSC測定から得られる情報の他、ACカロリメトリーと同様に、比熱容量に対応した比熱成分データを得ることが可能となります。ここでDSCの従来法で得られるデータを総熱流データと呼ぶこととすると、総熱流データから比熱成分データを差し引くことにより、比熱に関与しない成分のデータを得ることが可能となります。この成分データをカイネティック成分と呼ぶことにします。この様に温度変調DSCにより測定されたデータは、各成分に分離されるため、データ解析上で有効となる場合が多くあります。これからこの温度変調DSC(TM-DSC)についてその原理、特長、応用例を紹介します。
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TA No.62 |
- 熱可逆性高分子ゲルの昇温過程における発熱ピークとゲルの構造
ゲルを形成する多糖類は少量の添加物で食品の口あたりや舌ざわりなどを改善するtexture modifierとして、粘弾性や熱特性を調節するように用いられている。近年、高分子ゲルは基礎研究から技術開発に至るまで活発な研究がなされている。高分子ゲルの応用は理・工・農・薬・医の多岐にわたっており、新素材としての応用に期待がかけられている。 ポリビニルアルコール(PVA)、アガロースおよびカッパカラギーナンのように、分子中に多くの水酸基を含有する熱可逆性ゲルはDSCの昇温過程において、ゲルの融解時に急激な発熱ピークが出現する。この現象はゲルの融解過程時に分子鎖間の凝集による分子の再配列が主たるものと考えられている。これらの現象は試料ゲルの採取方法に著しく影響される。
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TA No.61 |
- DSCによる分離膜の分離性能評価
膜分離法は蒸留や機械的濾過では分離できない混合物の分離や、また常温で利用できるために熱的に不安定な物質の分離などその応用範囲は広い。分離方法によって精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜、透析膜、気体分離膜、透過気化膜、電気透析膜に分類される。また、膜に分離される物質を通過させるような孔が存在するか否かにより多孔膜、非多孔膜と呼ぶ。ここでは、水/アルコール混合物の透過気化法による分離に用いられたパーフルオロカーボン系イオン交換膜の分離特性を、DSCを用いて定量した膜中の不凍水量によって評価した例を示す。
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TA No.58 |
- フォトレジストの光硬化反応熱測定
フォトレジストは解像度が高く微細加工が可能であること、また短時間で耐エッチング性の薄膜が形成できるなどの特徴があり、プリント基板配線や電子部品製造または印刷製版など広い分野で使用されています。しかしフォトレジストは、光硬化時の露光波長、照射強度、反応温度等の条件により、耐エッチング性の薄膜の形成状態が変化することが知られています。そのため、最適な耐エッチング性薄膜を形成させるためには、種々の硬化条件の検討が不可欠となります。フォトレジストの中で、プリント基板のエッチングに使用されているドライフィルムは、重合反応により硬化するアクリルモノマー、フィルムに成形するためのバインダーポリマー、光硬化開始剤などから構成されており、それぞれの特性評価の面においても光硬化反応を測定することは重要なこととなります。 ここでは、光化学反応熱熱量計により、ドライフィルムの硬化反応を種々の条件で測定し、反応性の評価を行った例を紹介します。
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TA No.56 |
- 米のDSC測定
近年、食生活の変化により多くのインスタント食品が開発され、米についても調理済の冷凍品やパック品など、種々の加工品が製造・販売されています。米の主成分は澱粉であり、水と共に加熱すると澱粉粒が膨潤崩壊し糊化が生じます。糊化時には、澱粉粒内の水素結合の開裂に由来すると推定されている吸熱が生じます。この吸熱現象をDSCでとらえることにより、糊化の温度や熱量を調べることができます。ただし、糊化による吸熱量は小さいため、DSCで米の糊化を測定する場合には、高感度の装置が必要となり、また米粒と水を入れることのできる大容量の試料容器が必要となります。 ここでは、DSCによる生米や加工米の測定例を紹介します。
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TA No.55 |
- エポキシ系接着剤のDSC測定
エポキシ系接着剤は、金属、ガラス、セラミックス、プラスチックなど各種材料の接着や充填剤として使われています。この接着剤は、熱硬化型の接着剤で、主にエポキシ樹脂と硬化剤からなっています。硬化時には、エポキシ基が重合反応を起こし、架橋されて硬化します。DSCによりエポキシ系接着剤の測定を行うことにより、硬化前および硬化後のガラス転移温度、または硬化反応における温度や反応熱量などを調べることができます。 ここでは、市販の二液混合型エポキシ系接着剤について測定した例を紹介します。
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TA No.54 |
- 蛋白質の熱変性II
蛋白質は、水溶液状態において生物的機能を保持するために特定の三次元構造をとっており、温度が高くなると熱運動などのために構造が崩れる現象、いわゆる熱変性が生じます。一般に蛋白質の熱変性の際には、熱の吸収が起こり、DSCによりこの吸熱現象をとらえることができます。DSCにより蛋白質の熱変性を測定する場合、試料濃度が高いと、分子間の相互作用(凝集等)まで起こる可能性があるため、できるだけ希薄溶液で測定する方が望ましいとされています。また、昇降温速度は、蛋白質の熱変性速度および試料内温度分布を考慮し、低速昇温が望ましいとされており、一般に1℃/min以下の速度で測定が行なわれています。そのため、高感度のDSC測定が要求されます。ここでは、超高感度型のDSCを用いた蛋白質の熱変性の測定例を紹介します。
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TA No.53 |
- アモルファス多層膜の熱的安定性
アモルファス半導体多層膜が示す多くの特異な物性のうち、我々は多層膜の構造安定性に注目し、a-Ge:H/a-GeNx系を用いて研究を行ってきた。このような多層膜の安定性の問題は基礎物性の点から、あるいはデバイスヘの応用といった点からも非常に重要な問題であるにもかかわらず、いまだ十分理解されているとは言い難い。 アモルファス半導体多層膜の構造安定性を決定する因子は、基本的には(ⅰ)周期長(井戸層厚、バリアー層厚)と、(ⅱ)界面状態の2つと考えられる。(ⅰ)の周期長の効果は、“構造安定性のサイズ効果”とも言えるであろう。サイズ効果の直観的理解としては、アモルファスから結晶への構造変化においては、安定結晶核の生成および成長のプロセスを伴うが、このとき安定結晶核の臨界半径の大きさが周期長と同程度になった場合、結晶化転移点の上昇、あるいは膜構造の安定化といったサイズ効果が期待される。その際、界面状態が熱力学的な立場からは、界面エネルギーとして構造安定性に大きな影響を与えることが予想される。 本研究においては、アモルファス多層膜の構造安定性をa-Ge:H/a-GeNx系、およびa-Ge/a-GeNx系を対象にして行った実験の結果を示す。
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TA No.52 |
- 水・エタノール混合溶液のDSC測定
水・エタノール混合溶液のDSC測定に関しては、ウイスキーの熟成度の推定に応用した例1、2)が報告されて以来、多くの研究が行われてきました3)。 この方法は、水・エタノール混合溶液試料を-100℃以下の温度まで下げ、一定の昇温速度で測定した際に見られる融解ピークを観察するものです。この報告では、昇温時のDSC曲線における融解ピークとして、エタノール(-62℃付近)と水(-40℃付近)の他に、-60℃から-50℃付近に見られる水・エタノール複合体の吸熱ピークの大きさが、熟成度に依存するとされています。 ここでは、DSCと全自動ガス冷却ユニットを用いた、水・エタノール混合溶液の測定例を紹介します。全自動ガス冷却ユニットは、液化窒素の気化ガスを炉体部に導入する機構であるため、昇降温測定を完全自動で、かつ正確な温度コントロールで行うことができます。したがって、今回の測定例のように、マイナス温度域での昇降温測定では、このシステムが威力を発揮します。
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TA No.50 |
- 示差走査熱量測定によるDNA融解の微細構造の解析
遺伝情報を担うDNAは、小さな部類に入る大腸菌でも、その染色体DNAの大きさは約4700kb(1kb=1000塩基対)と巨大で、そのままでの取り扱いは困難であるが、染色体DNAとは独立に細胞質に存在し、自律増殖を行うプラスミドDNAは数kbから数百kbと小さく、取り扱いが比較的容易なので、分子生物学における研究対象あるいは研究手段としてよく使われている。小型のプラスミドDNAは、物理化学的研究の対象としても便利な材料である。DNAはグアニン(G)、シトシン(C)、アデニン(A)、チミン(T)の4つの塩基の共有結合によって形成された2本の相補鎖が、GC間やAT間の水素結合や隣接塩基対間のスタッキングのような弱い結合力によって2本鎖を形成している。このような構造をもったDNAは比較的低い温度で1本鎖に解離(融解あるいはヘリックス-コイル転移などと呼ばれる)するので、いろいろな物理的手段による観測が可能であると同時に比較的単純なモデルで近似することができるため理論的な取り扱いも容易である。またDNAの融解は、細胞内において複製、転写、組換えなどの遺伝の基本現象に関わっているので、生物学と物理学の接点にもなっていると思われる。DNAの融解は、数十塩基対から数百塩基対にわたって協同的に起こることが知られている。これは融解の微細構造と呼ばれているが、この現象はこれまでは主として紫外吸収、電子顕微鏡、ゲル電気泳動などによって観察されていた。これまでは熱測定による微細構造解析の報告はなかったが、これは熱測定に使われたDNAが染色体DNAや合成ポリヌクレヌクレオチドオチドのような巨大なDNAであったり、またオリゴのような極めて小さなDNAであったりしたためと思われる。染色体DNAのような場合は、あまりにも大きすぎて個々の微細構造が重なり合って全体としては1本の幅広いピークとしてしか観測されないからであり、合成ヌクレオチドの場合は、塩基配列が均一であったり小さいために協同性が分子全体に及んでいるためであると考えられる。 われわれは、数年前にpJL3-TB5と呼ばれる5277塩基対からなるプラスミドDNAを使って、初めてDNA融解の微細構造を示差走査熱量計(DSC)によっても測定可能であることを見出した。さらに、全塩基配列からの理論的計算によって、DSC曲線を塩基配列レベル、したがって遺伝子レベルで解析してきた。 ここでは、ColE1プラスミドについてDSCで測定し、理論的に解析した結果について述べる。
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TA No.49 |
- DSCによる酸化誘導時間測定
一般にポリマーは、酸素が共存すると酸化が起り、機械的強度や電気的特性が劣化します。この酸化による分解は、不活性ガス雰囲気の熱分解よりも低い温度から始まります。例えば、ポリエチレンは窒素ガス中では400℃付近から熱分解が始まるのに対して、空気中では200℃以下から酸化分解が進行することが知られています。このため、工業材料として一般に用いられているポリエチレンなどのポリマーには、酸化による劣化を防ぐために、各種の酸化防止剤が添加されています。一方、ポリマーの耐酸化性の評価方法としてDSCを用いる方法があり、測定方法は次の通りです。① 試料を窒素ガス雰囲気中で昇温し、所定の温度 で等温保持する。 ② 雰囲気を酸素ガスに切り換える。③ 酸素ガスに切り換えた後、酸化開始による発熱 が観測されるまでの時間(酸化誘導時間)を測定 する。 ここでは、PE(ポリエチレン)について酸化誘導時間を測定した例を紹介します。
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TA No.48 |
- 自己反応性物質のDSC測定
化学物質の中には自己反応性物質と呼ばれ、空気中の酸素の助けを借りることなく燃焼・爆発を起こす物質があります。これらの物質は、取り扱い次第では人命にかかわる事故を招きかねないため、自己反応性物質の危険性を評価することは非常に重要です。危険物を評価する方法は、古くから数多く考案されていますが、これらの中には試験法自体が危険な方法や、特殊な装置を必要とする方法が多く、簡便に行えるものがありませんでした。 近年、試験法の安全性と簡便さの点から、DSCを用いた危険物の評価法が注目されており、現在、実用化にむけての研究が進められています。 ここでは、DSCと密封試料容器を用いて測定を行った例と、その再現性についての検討結果を紹介します。
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TA No.46 |
- アモルファス金属薄膜のDSC測定
アモルファス金属は、硬度・耐食性など種々の優れた性質を有するため注目されており、実用化がすすんでいます。しかし、熱的に不安定で熱処理によって諸特性が変化するという欠点があり、熱的安定性の向上の研究が行なわれています。 DSC測定は、結晶化の研究には有用な手段であり、アモルファス物質の測定もよく行なわれています。ただし、アモルファス薄膜の場合は基板との相互作用があるため、剥離することなく測定を行なうことが重要となります。そのため、微少試料で測定が可能な高感度DSCが要求されています。 ここでは、超高感度型のDSCによる、Tb-Fe-Co系合金のアモルファス金属薄膜の測定例を紹介します。
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TA No.45 |
- DSCによる比熱容量測定II -測定条件の検討-
DSCを用いると比熱容量測定を容易に行なうことができます。近年、新素材の研究開発にともない広い温度範囲での比熱容量測定の必要性が高まりつつあります。ここでは、DSCを用い比熱容量測定精度におよぼす、昇温速度、試料量、昇温幅、および測定温度域について条件検討を行なった結果を示します。
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TA No.43 |
- 感光性樹脂中モノマーの後重合反応挙動の解析
光硬化型感光性樹脂を構成する主な成分としては、光重合反応を起こすモノマー、モノマーを均一分散状態で保持する高分子バインダー、反応触媒として機能する重合開始剤(増感剤)、およびその他の添加剤があげられます。反応は、重合開始剤が光照射によりラジカル分解した後、モノマーと結合し、そのモノマーラジカルが連鎖的に成長してゆく過程を意味します。このような反応を利用した材料には、UVインキ、UV塗料以外に、写真同感材(グラフィックアーツ用感材)があり、一例として図1にFDRドライフィルムの電子顕微鏡写真を示します。写真の黒色部分が光硬化した部分で、約40μmの幅を有し、白色部分が未硬化部で、最終的に感光性樹脂が除去されています。一般にこの種の材料は、光照射を止めた後でも、生き残っているラジカル種による成長反応が進行します。それにより、最終的に得られる材料の特性も変化します。従って、この特性変化を明確に知るためにも、後重合反応による重合率値を正確に測定する必要性が生じます。 ここでは、光化学反応熱熱量計により、光硬化型感光性樹脂中のメタクリル系およびアクリル系モノマーの後重合反応挙動を観察した例を紹介します。
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TA No.42 |
- 光重合反応の熱的測定
光重合型感光性樹脂は、代表約な有機感光材の一つで実用化されている材料も多い。光重合反応の進行状態を定量的に測定するには、従来からのディラトメトリー、UV-IRスペクトロメトリー、重量法などは多くの欠点を持ち、適用困難であった。ここでは、モノマーの重合に対応して現われる熱変化を定量的に観測し、ポリマー変換率を測定した。 熱測定による方法の長所は次のような点にあると考えられる。また、これはSSC550型光化学反応熱測定装置の特長とも対応する。1.多成分の化合物からなるフォトレジストに含ま れるモノマーの光重合反応解析ができる。2.熱的感度の非常に高い装置を使用すれば、薄膜 状のサンプルでも測定できる。3.重合熱の観測であるために、直接反応速度論的 解析ができる。
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TA No.41 |
- トナーの熱分析
複写機には、現像剤としてトナーと呼ばれるカーボンブラックと熱軟化性樹脂の混合微粉末が使用されています。この熱軟化性樹脂の特性により、トナーの性質が大きく左右されます。DSCにより、トナーに使用されている樹脂成分のガラス転移や融解を観察することができます。またTG/DTAでは、樹脂成分と添加カーボンブラックの分離定量を行うことが可能であり、各種トナーの評価や品質管理に利用されています。ここでは、DSCとTG/DTAによるトナーの測定例を紹介します。
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TA No.40 |
- DSCによる魚肉鮮度の測定
魚の筋肉タンパク質の主要構成成分は、筋原線維タンパク質のミオシン、アクチン及び調節系タンパク質(トロポニン、トロポミオシン等)である。生体内での筋肉運動は、筋小胞体から放出されるCaイオンが調節系タンパク質に結合すると、制御がはずれミオシシ-アクチンの相互反応が起こって、ATP(アデノシン三リン酸)分解のエネルギーを利用して収縮がおこる。これら魚肉の構造や筋収縮のメカニズムは畜肉のそれとほとんど変らない。しかし、魚肉の死後変化、すなわち、死後硬直、解硬(軟化)、及び微生物による腐敗への進行は、畜肉に比して非常にはやい。そのため、鮮度の保持及び、その判定方法に高度な技術が要求されている。死後硬直は死後、筋肉中のATP含量の減少、Caイオンの筋小胞体からの放出等により、ミオシンとアクチンが強く結合したために起こると考えられているが、この死後硬直を長く持続させることが、魚の鮮度を保つために重要である。死後硬直の開始する時間、強度、持続時間は、魚の死に至る状況(即殺、苦悶死)、魚の生理状態、環境温度、保存方法等に左右されるが、死後硬直の開始や強度を測定する有効な方法は現左のところ少なく、正確で簡便な測定方法の開発が望まれている。また、“あらい”現象は、即殺した魚肉を使用して人為的に硬直を起こさせたものであるが、このメカニズムに関する研究は少ない。 DSCのタンパク質研究への応用については、一般にタンパク質の変性に関するものが多数報告されている。魚肉の鮮度変化は、筋肉内の化学性状やタンパク質の変化と対応していることより、魚肉鮮度の測定にDSCの応用が考えられる。本稿では、鮮度の異なる魚肉(硬直前及び硬直終了魚肉)のDSCを測定した結果について紹介し、魚肉鮮度測定へのDSCの応用について述べてみたい。
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TA No.39 |
- 形状記憶合金のDSC測定
形状記憶合金は特定の温度域で形状が大きく変わる性質より、絶対的な信頼性を要求される油圧パイプの接合などで実用化されており、最近では家電、下着などの分野への応用も進められています。ここで取り上げたNiTi合金は、信頼性、耐久性の面から現在、形状記憶合金の中で最も多く用いられています。
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TA No.37 |
- アイオノマーのDSC測定
疎水性高分子中に適当な間隔を置いて少量のイオン(10モル%以下)を含んだ高分子は“アイオノマー”と呼ばれ、その特徴的な機能を利用して、例えばタフネスを要求される材料(ゴルフボールの外皮部分)、透過膜、医用材料などに広く用いられるようになってきました。このアイオノマーは適当な塩濃度(イオン基の量)以上ではイオン会合体(イオンクラスター)が形成され、このクラスター形成が強固な物理的架橋の役割を担っており、加硫による化学的架橋形成と同様な効果が期待されています。
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TA No.36 |
- (Na,Co)-A型ゼオライト中のCoイオン配位水
ゼオライトの物理・化学的性質は、骨格構造とその中に分布するカチオンにより支配されます。骨格構造を保ちながらアルカリ、アルカリ土類、遷移金属イオンをイオン交換することができ、それにより吸着、触媒、磁気的特性等をコントロールできます。しかしながら、これらの交換されたカチオンが、ゼオライト内でどのサイトを占めるかは分かっているものの、その分布が長距離規則性をもつかどうかは、構造解析でも未だ不明です。 そこで本研究では(Na、Co)-A型ゼオライト中のコバルトイオンが6から4配位に変化する時のエンタルピー変化を測定し、近接する2価カチオンの相互作用により配位のエネルギーがどのように変化するか調べ、カチオンの長距離規則配列の可能性を検討しました。
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TA No.34 |
- ドトリアコンタンの結晶多形
長鎖炭化水素化合物は、試料の熱履歴により結晶多形を生じることが知られています。結晶多形を有する有機化合物は医薬品に数多く見られ、医薬の薬効を決定する重要な因子となっています。 ここでは、結晶多形へのDSCの応用例として、ドトリアコンタン(CH3(CH2)30CH3)に熱履歴を加えた際の測定例を紹介します。
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TA No.33 |
- 食肉のDSC測定
食肉中には、多量の蛋白質や脂肪が含まれており、それらの熱変性や融解挙動を測定することにより、食品の品質についての情報を得ることができます。 ここでは、豚肉(肩ロース)とウインナーソーセージについて、超高感度型のDSCを用いて測定した例を紹介します。
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TA No.31 |
- 蛋白質の熱変性Ⅰ -塩、砂糖添加物およびpHの影響-
蛋白質の熱変性に関する知見は、生体および食品の広い分野で重要視されています。蛋白質の熱特性は、pH、イオン強度、蛋白質濃度などの影響を受けることが知られています。ここでは、広くお菓子や料理に使われている卵白の主蛋白質であるオボアルブミンをとりあげ、pHを変化させた場合、さらに砂糖濃度と塩濃度を変化させた場合について、熱変性ピークがどのように変わるかを調べた結果を示します。
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TA No.29 |
- ICチップ上の微量ハンダの成分分析
二成分系の物質のDSC測定結果から、その物質の組成比を求めることができます。最近すず(Sn)と鉛(Pb)の合金であるハンダのDSC測定から、その組成比を求める手法が報告されています。しかしその報告は、試料としてハンダそのものを採取した場合で、例えばICチップ上の極微量のハンダ等、現実的な応用例はDSC装置の感度の問題もありあまり報告されていません。ROM等に使用されるICチップの回りには、各リード線を引き出すためのハンダがそれぞれ盛ってありますが、SnとPbの組成比の違いはリード線との接合の良し悪しに影響すると言われています。この品質をチェックするにはチップ1個単位での検査が必要です。そこでここでは、超高感度型のDSCを用いてICチップ1個(約2.5mm四方)をそのまま測定し組成比を求めた例を紹介します。
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TA No.28 |
- 新素材金属のDSC測定
素材革命の時代と呼ばれている今日、特殊な物性をもつ新素材としてのアモルファス金属や形状記憶合金の研究がすすめられています。これらの金属の熱的性質を調べることは、製品としての使用条件や状態を把握する上で重要な役割を果たしています。 ここでは、アモルファス磁性材料としてFe-B-Si系のメタグラス、および形状記憶合金としてTiNi合金をとりあげ、DSC測定を行った例を紹介します。
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TA No.27 |
- フェナセチンの純度決定
物質の融点を測定し、その物質を同定したり定性的に純度をチェックすることは古くから行われてきました。最近では、高純度物質の純度決定を1~3mgの少量の試料で短時間に行えることから、DSCによる純度測定法1、2)が利用されています。ここでは、NBSより販売されているDSC用標準試料(No.1514:フェナセチン)について測定を行った例を紹介します。
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TA No.26 |
- ポリエチレンのDSC測定 -ポリエチレンの密度と融解の相関性-
ポリエチレンは、容器、テープ、文具など様々な製品に使用されています。ポリエチレンはその重合方法などにより、低密度のものから高密度のものに分類されています(0.92~0.96g/cm2程度)。 ここでは、密度が既知のメーカー支給低密度ポリエチレン(LDPE)および高密度ポリエチレン(HDPE)の融解をDSCで測定し、密度との相関について調べた例を紹介します。
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TA No.22 |
- 石膏の熱分析
石膏は非常に古くから建築材料として使用されたもので、その用途としては以下のようなものがあります。① ポートランドセメントの凝結遅緩剤② 石膏プラスター用、石膏ボード用、陶磁器成形型、 美術工芸用③ ニッケル製錬の副原料、イオウ分供給源④ ゴム、紙等の充填剤⑤ 豆腐の凝固剤⑥ 光学器械の特殊部品⑦ 医薬品、ギブス包帯、歯科補綴材料、解熱剤、 止渇剤 等 石膏を使用する上でその特性を知ることは重要となりますが、熱的特性として石膏は次のような熱変化を示す性質があります。CaSO4・2H2O CaSO4・1/2H2O+3/2H2O CaSO4+2H2O ……(1)これらの反応は平衡反応であり、焼石膏を水で練ると硬化する機構は、半水石膏から結晶石膏への変化を指します。 ここでは、TG/DTAとDSCによりこの石膏の熱変化の過程を測定した例を紹介します。
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TA No.20 |
- ポリエチレンフィルムの熱分析 I
ポリエチレンフィルムは包装材として広く使用されています。通常ポリエチレンフィルムには機能性を向上させるためにいろいろな物質が添加されています。そのひとつにフィルムの強度を向上させるために添加する補強剤があります。 ここでは、TMAおよびDSCで、補強剤の配合比率の異なるポリエチレンフィルムについて測定した例を紹介します。
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TA No.19 |
- 高含水ゲルの熱分析
示差走査熱量測定(DSC)で高含水ゲルの水の融解挙動を調べることにより、安定な高含水ゲルを得るための形成条件の評価や、自由水、結合水の状態の分析などを行うことができます。
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TA No.18 |
- シリコンゴムの熱分析
シリコンゴムは、耐熱性及び電気絶縁性が優れており、また薬品や油、水に対しても強いという性質を持っているため、各種電気部品や機械部品、また家庭用品や食品加工、医薬方面など幅広い分野で有用な材料として利用されています。シリコンゴムの特性は、充填剤や添加物などの種類とその量、さらにそれらの混成と加硫の条件によっても異なってきます。熱分析では、シリコンゴムのいろいろな熱的性質を調べることができます。ここでは、DSCおよびTG/DTAによるシリコンゴムの測定例を紹介します。
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TA No.15 |
- カフェインの熱分析
熱分析は、医薬品の研究や試験にも広く利用されています。ここでは、TG/DTAおよびDSCによりカフェインと無水カフェインを測定した例を紹介します。
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TA No.14 |
- 自由水、結合水の熱分析 -DSCによる自由水、結合水の定量-
物質と水との共存状態では、水は自由水と結合水に分類することができます。物質との相互作用がなく、0°Cで融解する水は自由水といわれ、また物質との相互作用のため、マイナス温度域でも凍結しない水や、凍結しても0°C以前から融解する水は結合水といわれています。結合水は生物の生理現象と密接な関係があることや、食品や薬品などの品質にも影響をおよぼすことから、各分野で研究が行なわれています。DSCで水の融解現象を観察することにより、結合水や自由水についての知見を得ることができます。ここでは、でんぷんとデキストランゲルについて、密封型試料容器を用いて測定した例を紹介します。
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TA No.12 |
- ポリマーの熱履歴
ポリマーの熱履歴を調べることは、ポリマー材料の内部構造と加工条件の関係を把握する上で、重要なこととなっています。ここでは、DSCでポリエチレンテレフタレート(PET)を測定した例を紹介します。
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TA No.11 |
- DSCによる比熱容量測定Ⅰ -比熱容量測定の原理とエポキシ樹脂の測定例-
DSCにより、少量の試料でも比較的簡単に比熱容量(Cp)を測定することができます。ここでは、DSCによる比熱容量測定の原理を説明するとともに、測定精度を試験するために行ったサファイアの繰り返し測定の結果と、応用例としてエポキシ接着剤とICパッケージ(エポキシ樹脂+フィラー)の測定例を紹介します。
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TA No.9 |
- ポリマーの等温結晶化
DSCで、等温状態におけるポリマーの結晶化を測定することができます。また結晶化のDSC曲線より結晶化速度などの解析を行なうことができます。ここでは、ポリエチレンテレフタレート(PET)と高密度ポリエチレン(HDPE)について、DSCにより等温結晶化を測定した例を紹介します。
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TA No.8 |
- 熱硬化性樹脂のDSC測定
熱硬化性樹脂の硬化反応熱やガラス転移温度の測定は、樹脂の特性を理解するうえで重要なこととなっています。ここでは、DSCでエポキシ樹脂とレゾール樹脂(フェノール樹脂)を測定した例を紹介します。
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TA No.7 |
- プラスチック成形品の評価
プラスチックは、成形法によりさまざまな特性を持たせることができます。一般に容器など寸法の安定性が求められる加工品では、材料の構造が無定形であることが望ましいとされています。また繊維やフィルムでは、方向性による強度を増すために配向がよく行なわれています。DSCでこれらの物性を調べることにより、いろいろなプラスチックの成形法や加工条件について評価することができます。ここでは、DSCで成形法の異なるポリエチレンテレフタレート(PET)を測定した例を紹介します。
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TA No.6 |
- でんぷんの糊化
でんぷんは、水分の存在する状態で昇温すると結晶形がくずれ、糊状になります。この現象をでんぷんの糊化といい、吸熱反応を伴うためDSCでとらえることができます。DSCで、でんぷんの糊化現象を観察することにより、でんぷんの種類の違いや、昇温速度、含水率の依存性などを評価することができます。ここでは、試薬でんぷん(和光純薬製)について、密封型試料容器を用いて測定した例を紹介します。
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TA No.5 |
- 口紅のDSC測定
熱分析は、化粧品の開発や品質管理にも広く利用されています。DSC測定により、口紅の主成分である油脂の融解を観察することにより、口紅の特性を調べることができます。ここでは、メーカーの異なる4種類の口紅について、DSC測定を行った例を紹介します。
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TA No.4 |
- 混合油脂のDSC測定 -DSCによる豚脂と牛脂の混合率の測定-
食品用油脂などいろいろな油脂中の異種脂肪の混入を、DSCにより判別することができます。DSCで油脂の融解や凝固を観察することにより、混合油脂中の異種脂肪の種類や、その混合率などについて評価することができます。ここでは、豚脂と牛脂の混合油脂について、密封型試料容器を用いて測定した例を紹介します。
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TA No.3 |
- 食品用油脂のDSC測定
一般に油脂製品の多くは、結晶多形などにより複雑な結晶構造になっています。DSCで、いろいろな油脂の融解現象を観察することにより、油脂製品の品質の安定性について評価することができ、また油脂の判別などに応用することができます。ここでは、カカオバターなど4種類の食品用油脂について、密封型試料容器を用いて測定した例を紹介します。
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TA No.2 |
- 界面活性剤のクラフト点
DSCは、界面活性剤の複雑な挙動を研究する上で、重要な知見を得ることができる分析法です。 低濃度の溶液試料でもクラフト点を測定することができます。ここでは、スルホベタイン型両性界面活性剤2種類の試料について、密封型試料容器を用いて測定した例を紹介します。
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TA No.1 |
- 脂質の相転移
DSCにより、低濃度の溶液試料でもリン脂質の相転移をとらえることができます。ここでは密封型試料容器を用い、濃度が3.67mg/mlから36.7mg/mlのDPLリポソームについて測定した例を紹介します。
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