光源ランプの話
日立の自動分析装置に使用されている光源ランプは、よう素タングステンランプ(ハロゲンランプ)と呼ばれています。
タングステンランプは、可視から近赤外域をカバーする連続スペクトル光源として、吸光光度計に広く用いられています。
タングステンランプとして最初に開発されたものは、発光体であるタングステンフィラメントの酸化を防ぐために、管球内を真空にしたものでした。
フィラメントは、自分の出す熱で蒸発してやせ細り断線を起こしたり、蒸発したタングステンが管壁に付着し管壁が黒化したりすることで、光出力が低下します。
したがって、タングステンランプの寿命はフィラメントの動化温度によって左右されます。ランプの光出力を上げようと、フィラメントの温度を高く設計すると、寿命は極端に短くなってしまいます。
これを解決するために見い出されたのが、タングステンハロゲンランプです。
これは、石英製のバルブの中によう素や臭素などのハロゲンガスが封入されたランプで、不活性ガスは、タングステンの蒸発を抑制する効果があります。
タングステンランプの寿命は、フィラメントの蒸発が主因となりますが、管壁が250℃以上に保たれ、かつバルブの中にハロゲンガスが封入されていると、管壁に付着したタングステン原子は、ハロゲンガスと結合してハロゲン化タングステンとなり、気化します。
このハロゲン化タングステンは、拡散により管壁部から電極の高温部に戻され、そこで解離するためタングステン原子がフィラメント表面に析出します。
その結果、フィラメントの消耗が抑えられてランプの寿命が長くなります。
この、ハロゲンとの反応により物質が低温部から高温部に戻される現象は、ハロゲンサイクルと呼ばれています。
特に、340nm を用いたレートアッセイでは、10-5~10-6Absオーダーの吸光度変化を測定しなければなりませんので、ランプの管理が重要なポイントになります。
ランプの交換時期
- ランプ点灯時間が750時間を過ぎた時 ランプの保証時間は、750時間です。複数の分析ユニットを持った装置では、同時に交換することをお勧めします。
- 測定データにノイズ、リニアーのコメントがついた時 フォトメータチェックなどで光出力が正常でも、短時間内のふらつきはチェックできません。
ノイズレベルは、吸光度によっても変わります。試薬の吸光度により、ノイズ、リニアーのつき方は一定ではありません。
ランプの交換時の注意点
1. ベース金具のガイドピンをしっかり入れて、固定ネジをきちんと締めてください。
ランプは一つひとつ光軸を合わせてベース金具に固定製作されています。
2. ランプのリード線は端子にしっかり締め付けてください。
3. ランプハウスが異常に熱くないか確認してください。
ランプハウスが手で触れられないほど熱いときは、ランプハウスの冷却不良です。
冷却不良の場合、ハロゲンサイクルがうまく動かず、ランプが黒化したり短寿命になったりします。
4. セルブランク測定を行ってください。
ランプを交換後は光量が変わりますので、必ずセルブランク測定を行ってください。
ランプ点灯後、交換するまで30分以上待ち測定してください。
参考文献
*1 小沢恭一 臨床用自動分析
*2 桑 克彦 実践臨床検査機器マニュアル
*3 南茂一/合志陽一 分析技術ハンドブック