試薬分注機構の話
分析パラメータに従って、第1試薬、第2試薬を分取してセルに注ぐのが試薬分注機構です。7150、7070、7170など、中小型装置での動作原理はサンプル分注機構とほぼ同様ですので、「メンテナンスの勘どころ(4)サンプルピペッターの話」をご参照ください。
ここでは、7250、7350、7450、736で用いられている分注機構についてお話します。これら大型装置の特徴は、試薬切替弁と多連切替弁の組み合わせ(下図)により試薬の吸引、吐出を行うシリンジの数を最小限にできるよう工夫をこらしています。
7250では1本のシリンジで16項目の試薬分注を、7350では10項目、7450では4または6項目(ユニットにより異なる)の試薬分注を受け持っています。また、736-10形では12項目、20形では6項目、30、40形では4項目、50、60形では2項目の試薬分注をそれぞれ行っています。
試薬分注系の動作原理
1. 試薬Aの吸引
試薬切替弁をボトル側へ、多連切替弁は試薬切替弁Aがシリンジとつながるように切り替えます。そして、シリンジプランジャーを下降させると試薬Aが吸引されます。
2. 試薬Bの吸引
試薬切替弁Aはボトル側のままで、多連切替弁は試薬切替弁Bがシリンジとつながるように回転します。そしてシリンジプランジャーをさらに下降させると試薬Bが吸引されます。
3. 試薬Aの吐出
試薬切替弁Aを吐出ノズル側に切り替え、多連切替弁をシリンジと試薬切替弁Aがつながる位置に回転させて、シリンジプランジャーを上昇させることによって、試薬Aをセル内に吐出させます。
4. 試薬Bの吐出
試薬切替弁Bは吐出ノズル側のままで、多連切替弁をシリンジと試薬切替弁Bがつながる位置に回転させ、シリンジプランジャーをさらに上昇させると、試薬Bがセル内に吐出されます。
5. 拡散試薬の洗浄
多連切替弁とシリンジ間の流路を、蒸留水でサイクルごとに洗浄します。多連切替弁を廃液ドレインとシリンジがつながる位置に回転させ、電磁弁を開けることによって、多連切替弁とシリンジ間を洗浄します。
6. 流路の水置換(洗浄)
試薬交換の初期動時および試薬流路洗浄時には、電磁弁を開き、流路内を蒸留水で洗浄します。
分析動作中は、動作1~5の動作を繰り返します。
以上は、試薬A、B2試薬について説明しましたが、実際は前記のとおり、1本のシリンジで多試薬の流路を設け、同時に多試薬の分注を行っています。
試薬分注系のメンテナンス
シールピースの交換
先に述べた通り、試薬分注シリンジは、1本で多数の分注を行っています。分注の正確性を維持するためにシールピースの3ヵ月ごとの交換をお願いします。
流路の洗浄
試薬ボトルを洗剤(ハイクロージェントAを10倍希釈)に置き換えて試薬プライムを実行することによって、試薬ボトルから試薬ノズルの先端までの試薬流路を洗浄することができます。洗剤洗浄後は蒸留水にて十分すすいだ後、試薬に置換してください。
また、7250/7350/7450ではセル洗浄に用いているハイアルカリをハイクロージェントA(濃度はそのまま)に置き換えて、試薬分注流路洗浄を実行することにより、試薬シリンジよりノズル先端までを洗浄することができます。
(詳細については、各装置の取扱説明書、保守点検の項をご参照ください。)
蒸留水(イオン交換水)の水質の維持
サンプル、試薬の微量化に伴い、分析に用いられる水質の良否が分析結果の善し悪しに大きく影響します。 特にFe、Caにおいては顕著に現れるので、分析開始時 電導度が1μS/cm以下であることを確認してください。