原子吸光光度計基礎講座 第8回 偏光ゼーマン補正法
偏光ゼーマン補正法
原子化部に磁石をセットし、原子蒸気に磁場を加えると原子蒸気の吸収スペクトルが分裂するとともに偏光特性を示します。一方、バックグラウンド(BKG)は磁場の影響は受けず、分裂や偏光特性は示しません。この現象を利用したのがゼーマン補正法です。
光源光の、磁場に平行な偏光特性を有する成分では、「π成分原子吸収+BKG吸収」が観測されます。しかし、磁場に垂直な偏光特性を有する成分では、「BKG吸収」のみが観測されます。(原子吸収を起こすσ成分は測定波長からシフトしているため、原子吸収を起こさない)
Q:「ゼーマン補正法の特長は何?」
A: (1)みかけの原子吸収線と差し引くためのBKG吸収線が立体的に全く同一の光路を通るダブルビーム測光方式(1本の光線を偏光子により二つに分岐)となっているためドリフトがなく、ベースラインが安定しています。
D2(重水素ランプ)補正法および自己吸収法は異なった性質の2種類の光線をそれぞれ測定しており、この方式をシングルビーム測光方式と呼びます。 この方式は2種類の光線が同一の状態で測光されていないため、ベースラインのドリフトが認められます。
(2)ゼーマン補正法は全波長域をカバーできます。
D2補正法・・・
- 紫外部の補正しかできません。
- グラファイト炉原子化法では性能が良くありません。
自己吸収法・・・
- 紫外部の補正しかできません。
- グラファイト炉原子化法では性能が良くありません。