分光光度計基礎講座 第3回 比色分析(吸光光度法)について(2)
掃除をさぼると吸光度が上がる(Bouguer-Beerの法則)
皆さんは熱帯魚が好きですか?
かわいいけれど水槽の手入れがちょっと面倒ですね。ここに、熱帯魚を飼っているAさんとBさんがいます。Aさんはきれい好きで熱帯魚を飼っている水槽はいつも澄んでいてきれいです。一方、Bさんは面倒くさがりやで水槽はいつも濁りがちです。
この二人の水槽を窓際に置いてみました。Aさんの水槽の水は澄んでいるので窓から差し込んでくる光をほとんど水槽越しにでも見ることができます。しかし、Bさんの水槽の水は濁っているため水槽越しだと光はほとんど届きません。 この窓から差し込んでくる光が水槽越しにどれだけ届くかの割合を「透過度」(T:Transmittance)と呼びます。 通常、透過度をパーセント表示した「透過率」(%T)の方がよく用いられています。
反対に、窓から差し込んでくる光が水槽の水にどれだけ吸収されたかの割合を「吸光度」(Abs:Absorbance)と呼びます。
掃除をさぼって濁った水槽の水ほど光を吸収して通さないので吸光度は上がり、透過率は下がります。逆に、いつも澄んでいる水槽の水は光をよく通すので透過率は100%に近く、吸光度はゼロに近くなります。
この理屈を数式にしてみましょう。窓から差し込んでくる光をIo、水槽を通って出てくる光をIとすると透過度はI/Ioとなります。さらに、 水槽の幅(光路長)を、水槽の水の濁り具合(濃度)をc、物質(この場合は濁りの原因の物質)特有の定数(「モル吸光係数」という)をεとすると、透過度は10-となります(式1)。吸光度は、透過度の逆数の対数なので式3のようになり、モル吸光係数と濃度と光路長に比例していることがわかります。この式3をブーゲ・ベールの法則といいます。
Bouguer-Beer(ブーゲ・ベール)の法則
溶質(呈色物質)の吸光度(Abs)は、溶液の濃度(C)と液層の厚さ (l) に比例する
Bouguer-Beer(ブーゲ・ベール)の法則は、JIS K 0212では「Lambert-Beerの法則」と呼ばれています。
モル吸光係数とは、物質(溶質)に特有な定数で、分光分析において各物質を定量する際に必要です。