分光光度計基礎講座 第5回 比色分析(吸光光度法)について(4)
色を見る(スペクトル)
スペクトルって何?
定量分析では、ある一つの波長に対して物質がその光をどれだけ吸収するかを比較して濃度を決定しました。 では、他の波長ではどのくらい吸収するでしょうか? 物質が、各波長に対してどのくらい吸収するかをグラフにしたのが「スペクトル」です。 紫外・可視分光光度計では、透過スペクトルと吸収スペクトルを測定することができます。 スペクトルは、横軸が波長、縦軸が透過率や吸光度になります。下に示してある透過スペクトルと吸収スペクトルを見て透過率と吸光度の関係をもう一度思い出してください。
スペクトルで何がわかる?
前章で鉄の定量分析をしましたが、いったい何nmの波長で測定すればいいのでしょうか? 吸収が大きい波長ほど感度が高くなるので、なるべく吸収が大きい波長を選びたいのですが・・・
そこで吸収スペクトルの登場です。
下のスペクトルを見てください。これは発色試薬を加えた鉄溶液ですが、510nm付近の吸収が一番大きいですね(吸収が一番大きくなる波長を吸収極大波長といいます)。 これで鉄は510nm付近で測定すればよいということがわかりました。 このスペクトルの形は発色試薬を加えた鉄溶液に特有のものなので(濃度によって全体の吸収強度は変わります)、何かわからない溶液がある場合、そのスペクトルを測定し、下図のスペクトルと一致していれば、発色試薬を加えた鉄溶液だということもわかります。 このように、スペクトルを測定することにより物質の性質を調べることができます。
また、紫外・可視スペクトルの吸収極大波長とモル吸光係数などから物質の化学構造を知ることもできます。
(定性分析)