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構造細胞生物学のための電子顕微鏡技術

13. 電子顕微鏡トモグラフィー:トモグラフィーによる立体再構築(2)

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(2) 細胞レベル

細胞あるいは細胞内小器官の立体構造解析となると、あまりに複雑すぎて前述のような電子線結晶回折や単分子解析法のような手法をとることは出来ない。
従来の切片法やフリーズレプリカ法から得られる画像をもとに立体構造を再構築することになる。この立体再構築法の基本的なアルゴリズムはすべて同一といっても過言ではない。
かなり昔使用された再構築法に連続切片法がある。これは細胞の連続切片をつくり、一つの構造に着目し、それを厚紙などにトレースして切り抜き、切片の順に積み上げて立体模型を作る方法である。
トモグラフィーによる立体再構築も、基本的にはこの操作をコンピューターでやることにほかならない。共焦点レーザー顕微鏡では連続切片を光学的に作り出しそれを積み重ねる。電子顕微鏡では光学的に切片を作製できないので、試料を傾斜させながら、透過像を撮影し、これをもとに水平断像(切片)を算出する。
任意の角度ステップで如何に効率良く、また正確に傾斜像を自動的に取得しファイリングするか、またこれらの連続画像ファイルからどれだけ迅速に正確な水平断像を計算し立体再構築を行なうかが各関連会社の競争点でもある。そのため各社とも試料傾斜の構造や画像ファイリングが異なる。
そして、これらに関与する画像処理ソフトも自前で作る会社あるいは外注する会社とさまざまである。いずれにせよ一度水平断像のファイルを作ってしまうと立体再構築はVox Blastのような光学顕微鏡用ソフトウェアでも使用できる。

膜裏打ち構造について

細胞膜は細胞質と外界を隔てる単なる限界膜ではなく、レセプターやチャンネルの膜蛋白を通じて情報伝達を司る重要な細胞器官でもある。また、細胞膜は機能的にも構造的にも均一ではなく、ラフトをはじめとする様々な機能ドメインから構成されていると考えられている。そして、これらのドメインと膜蛋白質複合体の動きや機能を制御しているのが膜の裏打ち構造である。しかし、ラフトの大きさ密度など形態学的実態は不明である。我々はこれら機能ドメインの形状や大きさを測定し、かつ膜裏打ちとの関係を明らかにしようとしている。
このような研究目的を達成するために我々は免疫エッチングレプリカ法とトモグラフィーによる三次元画像解析6)およびEELS Imagingを用いた。
単なる構造の立体観察ではなく、いかなる蛋白がどのように膜表面や膜骨格に付着しているかを明らかにする必要があるため免疫エッチングレプリカ法は必須であった。図1はエッチングレプリカ法で観察したNRK細胞の膜の細胞質側表面を示している。カベオラやクラスリン被覆小穴および膜面に密着したアクチン線維が容易に観察される(これらはすべて免疫分子化学的に同定済みである)。
図2はCRMP-2(collapsing response mediated protein-2)が成長円錐にあるクラスリン被覆上に存在することを示す免疫エッチングレプリカ像である。CRMP-2は軸索決定因子の一つで微小管の伸長に関係することが知られているが、このように膜のrecyclingにも関与する可能性がある。

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