HPLC Chromaster(クロムマスター)-飲料水中のフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)の分析-
近日、海外で、主に可塑剤として使用されているフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)が、食品から多量に検出されたという報道により、食の安全への関心が高まっています。可塑剤は、通常、合成樹脂(プラスチック)に柔軟性を持たせたり加工しやすくするために添加されますが、多量に摂取することで、発がん性の危険や、肝機能障害の可能性が高いとされています。
市販のスポーツ飲料には、通常、乳化剤が添加されており、ゼリー、健康食品などにも使用されています。乳化剤には、アラビアゴム、パーム油などが広く使用されていますが、今回、メーカーがコスト削減のために、パーム油の代わりに食品での使用が禁止されているDEHPを使っていたことがわかりました。さらに、追跡調査の結果、飲料、果汁、ジャムなどにも使用され流通していることがわかり、メディアを騒がせることになりました。そのため、多くの食品及び原料についてDEHPの混入の確認が必要となっています。
フタル酸エステルを確認する方法には、LC法、LC-MS法などがありますが、ここでは、LC-DAD法についてご紹介します。
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)の分析
標準試料の分析:
標準試料の調製:濃度0.1~100 mg/Lになるようにアセトニトリルで調製
[標準試料]フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)
[構造式]
等高線表示と抽出クロマトグラム
DEHPの吸収スペクトル
分析条件:
カラム | HITACHI LaChrom C18(5 µm)(4.6 mmI.D.×150 mm) |
溶離液 | H2O / CH3CN = 2/98 (v/v) |
流量 | 1.0 mL/min |
カラム温度 | 30 ℃ |
検出 | DAD 224 nm |
注入量 | 10 µL |
装置構成:
Empower2 データ処理システム
検量線と定量下限値
[検量線]
検量線は0.1~100 mg/Lの濃度範囲で良好な直線性を示しました。
また、本測定法での定量下限値は、S/N=10とした場合0.18 mg/Lでした。
標準試料の繰り返し再現性
標準試料(濃度10 mg/L)の6回繰り返し測定の再現性を以下に示します。
保持時間(分) | 面積 | |
1 | 7.058 | 131486 |
2 | 7.057 | 131742 |
3 | 7.056 | 131456 |
4 | 7.057 | 131769 |
5 | 7.056 | 131609 |
6 | 7.057 | 131743 |
平均 | 7.057 | 131634 |
%RSD | 0.011 | 0.11 |
保持時間の再現性は0.011%、ピーク面積再現性は0.11%と良好な結果が得られました。
試料分析例:【試料1:ミネラルウォーター】【試料2:スポーツドリンク】 試料1、2にDEHP(アセトニトリルで調製)を添加し、分析試料としました。 (前処理:0.45µmのフィルターでろ過)
【試料1:ミネラルウォーター】
【試料2:スポーツドリンク】
試料1、2のみを分析し、何も検出されないことを確認後、DEHP 1 mg/Lおよび10 mg/Lを添加した試料を分析した結果、DEHPが検出されることを確認しました。
注意:本掲載データは測定例を示すもので、数値を保証するものではありません。
本製品は研究用です。診断用ではありません。