分析のコツ-研磨紙の種類による測定値への影響-
固体発光分光分析装置(OES)では、一般的に前処理として試料表面を研磨や研削します。
試料が未処理の場合、離型剤やブラスト処理の影響により、規格値外の測定結果が得られることがあります。また、試料表面に凹凸がある場合は、測定サイトに大気が入り、測定できないことや装置仕様より精度が悪くなることがあります。
前処理における重要な項目の一つとして、研磨紙の選択が挙げられます。研磨紙の材質には、工業用ダイヤモンドや炭化ケイ素、アルミナ、ジルコニア等がありますが、研磨紙からのコンタミを防ぐため、測定元素と異なる材質の研磨紙を選択することが推奨されます。
本資料では、分析のコツとして研磨紙の種類による測定値への影響をご紹介します。
研磨紙の種類による測定値への影響
分析方法
- OE750を用いて、2種類の研磨紙(炭化ケイ素/アルミナ)で処理した認証標準物質を測定しました。
光学系 | パッシェン・ルンゲ |
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焦点距離 | 400 mm |
回折格子溝数 | 2400 本/mm |
検出器 | マルチCMOS |
観察波長範囲 | 119~766 nm |
光学系雰囲気 | 中圧真空 |
試料 | 認証標準物質BS 304B(SUS304L相当) (Brammer Standard Company, Inc.) |
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前処理方法 (研磨) |
卓上試料研磨機IM-P2(IMT) 回転速度:50~400 rpm 研磨紙:炭化ケイ素, アルミナ(#80) |
分析条件 | ステンレス鋼用分析プログラム |
分析例
- 2種類の研磨紙(炭化ケイ素/アルミナ)で処理したSUS304L相当の認証標準物質をそれぞれ5箇所測定しました。*
- 研磨紙が炭化ケイ素の場合、全ての元素において認証値と同等の結果が得られました。
- 研磨紙がアルミナの場合、炭化ケイ素と比較し、平均値はCおよびSiは低く、Alは高い傾向を示しました。
- 研磨紙の種類によって、測定値に数10 ppm程度の誤差が生じました。
- 再校正と測定は、同じ種類の研磨紙で行う必要があります。
* 再校正には、炭化ケイ素の研磨紙を使用
表3. 認証標準物質の認証値および測定結果
表4. 認証標準物質の認証値および測定結果