可搬型固体発光分析装置によるステンレス鋼線材・棒材の元素分析
ステンレス鋼は鉄を主成分とし、クロムやニッケルなどを含有した合金で、優れた耐食性を有していることから様々な分野で使用されています。例えば、工場の配管などでよく使われるSUS316は、JIS規格では炭素量が0.08%以下に対し、SUS316Lは炭素量が0.03%以下となっています。これは、ステンレス鋼は炭素量が低いほど耐食性が高くなるためです。見た目では判断できませんが、規格によって炭素量が異なるため、出荷時(使用時)の異材混入を防ぐためにも材質を判別する必要があります。
上述の通り、ステンレス鋼は建築や土木分野でも使用されており、測定対象物が簡単に動かせないものがあります。その場合、可搬型の固体発光分光分析装置が有効になります。さらに、本装置では、アダプタを使用することでφ10mm以下の端面や線材、棒材の分析も可能です。
本資料では、可搬型固体発光分光分析装置 PMI-MASTER Smartを用いて、線材・棒材測定用アダプタおよびステンレス鋼線材・棒材の分析例をご紹介します。
ステンレス鋼材の元素分析
分析方法
光学系 | パッシェン・ルンゲ |
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焦点距離 | 300 mm |
回折格子溝数 | 1774 本/mm |
検出器 | マルチCCD |
観察波長範囲 | 165~420 nm(UVタッチプローブの場合) |
光学系雰囲気 | アルゴンガス |
試料 | 線材 φ5 mm(SUS304) 線材φ8 mm(SUS316) 棒材 φ20 mm(SUS316、SUS316L) |
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前処理方法 (研磨) |
卓上試料研磨機IM-P2(IMT) 回転速度:50~400 rpm 研磨紙:#80 |
分析条件 | ステンレス鋼用分析プログラム |
分析例(SUS304 線材 φ5 mm)
- 線材測定用アダプタ を用いて、φ5mmの棒材の曲面を5箇所測定しました。
- SUS304の規格値内の結果が得られ、SUS304であることが確認できました。
- φ5mmの線材の曲面も、安定的に測定することが可能です。
* 検出下限値近傍および検出下限値以下の元素は除く。
表3. SUS304規格値およびサンプル測定結果(JIS規格対象元素のみ抜粋)
分析例(SUS316 線材 φ8 mm)
- 線材測定用アダプタ を用いて、φ8mmの棒材の端面を5箇所測定しました。
- SUS316の規格値内の結果が得られ、SUS316であることが確認できました。
- φ10mmに満たない端面も、測定面として分析することが可能です。
表4. SUS316規格値およびサンプル測定結果(JIS規格対象元素のみ抜粋)
分析例(SUS316/316L 棒材 φ20 mm)
- 棒材測定用アダプタ(ラバーシール)を用いて、SUS316/316L 棒材の曲面を各5箇所測定しました。
- それぞれSUS316およびSUS316Lの規格値内の結果が得られました。
- 炭素量0.03%以下の測定が可能なため、ステンレス鋼L材の判別が可能です。