固体発光分析装置による機能性金属の元素分析(高強度アルミボルト)
近年、地球環境保護のため、二酸化炭素の削減が求められています。自動車から排出される二酸化炭素量を削減するため、電気自動車をはじめとする次世代車が普及しています。走行距離を伸ばすためにはバッテリー容量を増やす必要がありますが、バッテリーが重くなると電費は悪くなってしまいます。さらに、自動車には安全性の確保や操縦安定性の向上といった要求事項もあります。これらの要求を満たすためには、車体装備品を増やすなどの対応が必要となり、車体重量は増加してしまいます。
そこで、安全性の確保や操縦安定性の向上をいった要求を満たしつつ、車体の軽量化を実現する方法として、車体の材料が従来の鉄鋼から超ハイテン鋼やアルミニウム合金に変わり始めています。
本資料では、品質管理に適したFOUNDRY MASTER Smart (FMS)による高強度アルミボルトの元素分析例をご紹介します。
高強度アルミボルトの元素分析
分析方法
光学系 | パッシェン・ルンゲ |
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焦点距離 | 300 mm |
回折格子溝数 | 1774 本/mm |
検出器 | マルチCCD |
観察波長範囲 | 174~420 nm (最大波長671 nm Cu, Na, Li用) |
光学系雰囲気 | アルゴンガス |
試料 |
高強度アルミボルト |
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前処理方法 (研磨) |
卓上試料研磨機IM-P2 (IMT) 回転速度:50~400 rpm |
分析条件 | AL_500 (Al-Zn合金用分析プログラム) |
分析例
- 高強度アルミボルトを5箇所測定し、平均値(Avg.)および相対標準偏差(RSD)を算出しました(表3)。
- A7050の規格値と比較すると、MgやZnの含有量が規格値より多いことが分かります。
- アルミニウム合金の中では高強度とされる7000系合金から、より強度が高くなるよう成分調整されていると考えられます。
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MgやZnは流動性や靭性に影響を及ぼすことがあるため、ダイカストでは最大含有量が規定されています。
自動車にはアルミダイカスト部品が多く使用されていることから、リサイクル時に混入しないよう注意が必要です。 - BはTiとの共存により結晶粒微細化効果があるとされますが、含有量によっては、溶湯の流動性低下にもつながることがあるため、このような微量元素の確認も重要です。
表3. 高強度アルミボルトの測定結果