OE720によるアルミダイカストの元素分析
ダイカストとは、溶融したアルミニウムや亜鉛、マグネシウム合金などを金型に圧入し、複雑な形状の製品を高精度に大量生産できる鋳造法です。ダイカスト生産量の約95 %をアルミニウム合金が占めており、特に、ADC12に代表されるAl-Si-Cu系合金は、自動車部品をはじめ、様々な製品に使用されています。
アルミダイカストの製造工程では、酸化物や硫化物などの介在物を除去するためにフラックス処理を行いますが、原料としてリターン材を用いる場合、インゴットと比較して表面積が大きいため介在物の含有量は多くなります。フラックスの原料としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属などのフッ化物・塩化物が用いられますが、NaやSrなど規格対象以外の元素も併せてモニタリングすることで溶湯の品質管理にも役立てることができます。
本資料では、規格元素から微量元素の分析も可能なOE720によるアルミダイカストの元素分析例をご紹介します。
アルミダイカストの元素分析
分析方法
光学系 | パッシェン・ルンゲ |
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焦点距離 | 400 mm |
回折格子溝数 | 2400 本/mm |
検出器 | マルチCMOS |
観察波長範囲 | 174~766 nm |
光学系雰囲気 | アルゴンガス |
認証標準物質 (CRM) |
3301-2/3-03 (SpeiraGmbH) |
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前処理方法 (切削) |
精密卓上旋盤Compact 9 (東洋アソシエイツ) 回転速度:100~2500 (min-1) |
分析条件 | Al_450 (Al-Si-Cu 合金用分析プログラム) |
分析例
- アルミダイカストADC12相当の認証標準物質を10箇所測定し、平均値(Avg.)および相対標準偏差(RSD)を算出しました(表3)。
- 全ての元素において、認証値と同等の結果が得られました。
- RSDは良好であり、精度良く測定できていることが分かります。*
- ADC12の規格には入っていませんが、フラックス処理で用いられるNaやSrをはじめとする微量元素の測定も可能です。
* 検出下限値近傍および検出下限値以下の元素は除く。